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アシスタントで来ただけなのに…!

第1章 鬼才漫画家、市川ルイ

受信箱には須藤加奈子様と書かれた一通のメールが届いていた。

そそくさに私は震えた手で受信箱にあったメールをタッチする。
浮かび上がった文章を見て、私は飛び上がった。
左から右へと文章を何度も読み、声に出した。

「この度はご応募いただきありがとうございます」

「日程了承しました。当日はお送りした地図を目安にお越しください」

「…市川ルイ」

このメールは市川ルイ本人からのメール?
それとも担当者からのメール?
高鳴るこの胸が抑えられない。私と市川先生は徐々に距離を近くさせている。
高揚した気持ちが止まらなくて立ち上がる。やった。こんなに早く夢が叶うなんて。
 
いざ本人を目の前にしたらどうしよう。
メディアに姿を現すことない市川ルイ。撮られた写真は週刊誌での奇妙なまでに美しい横顔一つだけ。
正直、その姿も市川ルイとは信じ難い。
自ら姿を見せることは無いのだから。
雑誌のインタビューやあとがきで語ることすらなにもしない。

不思議な存在、不思議すぎて誰もが不可思議と思う。
謎が多くある市川ルイ。
一体どんな人物なのだろう?そして私は本人をこれから間近で拝見することができる。

ふと、また影が横切った。
私の生活ではよくあることだ。
昔からそのような体質だったから。人はそれを霊感があると言う。
でも見えるのは黒い影だけで、鮮明な姿は見えない。

そんな自分の体験談も、活かせるといいな。
そしたらこの体質で生まれてきたことに感謝できる。

「あぁ、早く会いたい」

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