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アシスタントで来ただけなのに…!

第1章 鬼才漫画家、市川ルイ

数時間後。

何度もスマホを開いては先程ログインし送信ボタンを押した私の捨てメールの受信ボタンを指先でタッチする。

まだ、届いてない。
今か今かと心臓が鼓動を立てている。
何度も繰り返し開いて閉じてをする動作はもはや無意味なのではないか。
何か時間を潰して待っておくのが普通だと分かっているのにスマホが手放せない。メールの受信箱が気になって仕方がない。

そして私は、まだ懲りずに祈る思いと最高の瞬間を待ち続ける自分に神は導いてくれることを信じてまた指先を上から下へスワイプする。

「届いてますように…!」

ソファの右側の手すりを背に、伸ばしていた足の膝を立てて両手で祈るように指先を絡ませた。
そして恐る恐るスマホに手を伸ばして、タッチした受信箱の中を確認する。

が、やはりそこには白い画面しか広がってなかった。

「はぁ〜だめか〜」

項垂れるように立てていた膝を伸ばし、あぁ〜と声を上げてはだらしなくソファに身体を沈ませる。
見上げるようにスマホを見ても、綺麗な液晶に浮かぶのは白い画面だけ。もう一度リロードしてみても、何も変わらない。

やはり、詐欺だったのだろうか。
最悪の可能性が浮かび上がりながらも、それを打ち消すようにでもでも!と頭の中で繰り返した。

市川ルイは多忙なんだ。
他の関係者や既に着いてるクライアントもきっと忙しくてメールを確認できていないのかもしれない。

ふと、時計を見る。
早朝に起こされてから、早くも四時間が経過していた。
 
まだ10時15分。午前中に打ち合わせがあるのかもしれない。
きっとそうだ、それか午前中の予定が終わったあとに事務の作業に入るんだ。漫画家なんだからその他に優先すべき事は沢山あるはずだ。

これはもはや異常なまでの現実逃避だ。
そして自分の都合のいい様、事が運ぶことを願い強く信じた妄想だ。

それくらい私は郵便ポストに入っていた茶封筒を信じている。

きっと、まだ大丈夫。
もう少し待っていよう。

最後にリロードをして、だめだったら一眠りでもしようと思い、親指で画面を下へスクロールしてリロード中のマークを確認して目をギュッと閉じる。
そして恐る恐る開けると、驚くべき光景が広がる。

「え…?届いてる…?」

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