
アシスタントで来ただけなのに…!
第1章 鬼才漫画家、市川ルイ
キャリーケースを抱えて、私は父の仏壇の前に立った。
膝を曲げて座り、お線香に火を灯して手を合わせる。
父は私が幼い頃に急死した。
不慮の事故だった。
当たり前の生活から父が居なくなり、それから母は当たり前の生活を取り戻そうとがむしゃらに働き、私を育ててくれた。
父が亡くなった当初、葬儀の時に母は静かに涙を流していたが、母の涙はそれっきりだった。
芯のある、強い母親のように思っていたが、大人になって母の苦労を知った。
まだ幼い私をここまで育ててくれた。
私の夢の為に高い学費を出して、誰よりも応援してくれていた。
そんな母の為に、私は行かなくてはいけない。
「…お父さん、私行ってくるね」
目を瞑り、深く父の事を考えた。
父は今きっとそばにいる。私の手を握ってくれている。
温かく感じた。父の温もりだ。
幼い頃の記憶しかないのに、父の温もりは忘れずにいた。
不意に一筋の涙が零れた。
私は愛されているんだと実感したからだ。
合わせた手をゆっくり下ろして、微笑む父の写真に向かって小さく呟く。
「…大好き。私、お母さんのために頑張るね」
立ち上がり仏壇に背を向けたが、最後に振り返って父を見つめた。
手を振ってくれている気がした。写真に写ってる優しい笑顔で見送ってるような、そんな気がしたのだ。
私は父に手を振って、傍に置いていたキャリーケースを再び手に取り、玄関へ向かった。
膝を曲げて座り、お線香に火を灯して手を合わせる。
父は私が幼い頃に急死した。
不慮の事故だった。
当たり前の生活から父が居なくなり、それから母は当たり前の生活を取り戻そうとがむしゃらに働き、私を育ててくれた。
父が亡くなった当初、葬儀の時に母は静かに涙を流していたが、母の涙はそれっきりだった。
芯のある、強い母親のように思っていたが、大人になって母の苦労を知った。
まだ幼い私をここまで育ててくれた。
私の夢の為に高い学費を出して、誰よりも応援してくれていた。
そんな母の為に、私は行かなくてはいけない。
「…お父さん、私行ってくるね」
目を瞑り、深く父の事を考えた。
父は今きっとそばにいる。私の手を握ってくれている。
温かく感じた。父の温もりだ。
幼い頃の記憶しかないのに、父の温もりは忘れずにいた。
不意に一筋の涙が零れた。
私は愛されているんだと実感したからだ。
合わせた手をゆっくり下ろして、微笑む父の写真に向かって小さく呟く。
「…大好き。私、お母さんのために頑張るね」
立ち上がり仏壇に背を向けたが、最後に振り返って父を見つめた。
手を振ってくれている気がした。写真に写ってる優しい笑顔で見送ってるような、そんな気がしたのだ。
私は父に手を振って、傍に置いていたキャリーケースを再び手に取り、玄関へ向かった。
