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おばけトンネルとお姉ちゃん

第1章 おばけがいるのよ

 ふざけているのか、それとも本気なのか、姉貴は寝ころびながら俺の体を蹴ってきた。姉弟のじゃれあいと思えなくもないが、狭い布団のなかにいるのは、十七歳の女子と十五歳の男子である。 
 変に意識をしてはいけない。俺は自分にそう言い聞かせて、姉貴に背中を向けて横たわった。四畳半の狭い部屋に布団を敷いているので、俺の目の前には土壁しか見えない。姉貴は「怖い、怖い」と呟きながら俺の背中にぴったりと体をくっつけてくる。
 姉貴の体がぬくい。桃のような匂いも容赦なく俺の鼻腔に飛び込む。その匂いは姉貴が自分専用に使っているシャンプーの香りであるが、ここまで身近で嗅ぐのも初めてだった。
 とにかく姉貴の意図が分からない。普段の姉貴を知る限り、幽霊を怖がるようなタマではない。もしかして、本当に幽霊を見たのか。非科学的な心霊現象など全く信じていない人間であっても、実際に見てしまうと恐怖におののくのは当然だ。
「ねえ、どんなおばけがいたの?」
 俺はとりあえず聞いておこうと思った。
「え? あ~なんかね~。白かったね。白いモヤみたいなのが部屋の中に入ってきたの」
「モヤ? 煙みたいな?」
「そうそう。もわ~とした煙みたいなのが入ってきて、それがだんだん人の形になるの」
 姉貴は語りながら、怖かったことを伝えるように俺の背中に強くしがみついてきた。
 うわ、うわ、おっぱい!
 背中に感じる姉貴の乳房は、食パンの白い部分のように柔らかくて俺は生唾を飲んだ。同時に、幽霊のことなどどうでも良くなった。俺は今まで姉貴に対して性的な欲望を覚えたことはない、といえば嘘になる。姉貴というより、女子の体に興味があった。姉貴の裸を見たいと思ったこともあるし、居間でうたたねしている姉貴のスカートの中をちらりと覗いたこともある。だけど姉貴とセックスをしたいなんて発想はなかった。しかし、今はどうだ。姉貴にその気はなさそうだけど、俺は完全に意識していた。
「ねえ」
 ふいに姉貴は俺の耳元に顔を寄せて囁いてきた。声色もなんだかすこぶる大人っぽい。
「なんだよ……」
 俺は出来るだけ冷静を装って、面倒臭そうに答えたのだが、
「あんた、オナニーとかしてるの?」
 おばけの話よりも信じられないことを何の脈略もなく姉貴は囁いてきたのだ。しかも、「ご飯どうするの?」と訊ねるぐらいの軽いノリで。
「何いってんだよ」

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