テキストサイズ

君の体温は義務だった

第4章 接続

答えは、出なかった。

「……分かりません。」

嘘偽りなく、正直に答えた。
高瀬部長はふっと、柔らかく口元を緩めた。

「そうですか。」
「はい。」
「でも、こないだまでの悠木くんなら、何か新しい数字や指標を増やして解決しようとしていたんじゃないですか?」

完全に図星だった。

「……はい。」
「それが違うと気づいた?」
「……はい。」
「なぜですか?」

俺は少しの間、自分の胸の内に問いかけた。そして答える。

「新しい数字を作ったところで、今度はその数字を見て『大丈夫だ』と慢心することに変わりはないと思ったからです。」

高瀬部長は無言で聞き入っている。

「どれだけ精密で複雑なアルゴリズムを作ったとしても、それはデータであって人間そのものにはなれません。」
「……。」
「だったら、数字を増やすこととは全く別のアプローチも考えなければいけないのだと思います。」

高瀬部長はしばらくの間、沈黙を守っていた。
やがて、机の上にレポートを丁寧に置く。

「分かりました。」
「はい。」
「レポートは受領します。」
「ありがとうございます。」
「ただし。」

高瀬部長が、どこか楽しそうに目を細めた。

「悠木くん。」
「はい。」
「次は、その『別の方法』を具体的に考えてみてください。」
「……。」
「『分からない』ということが分かっただけでは、プロの仕事としては終われませんからね。」
「……はい。」

思わず苦笑いが漏れた。

「厳しいですね。」
「仕事ですから。」
「ですよね。」
「期待しています。」

その言葉の響きが、ズシリと胸に重く響いた。

「……はい。失礼します。」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ