
君の体温は義務だった
第4章 接続
「悠木くん。」
「はい。」
「これは、かなり慎重に書いていますね。」
「……そうですか?」
「ええ。」
レポートに視線を落としたまま、高瀬部長が静かなトーンで続ける。
「HUG+の現行システムそのものを否定しているわけではない。」
「はい。」
「むしろ、現在の仕組みが社会的に極めて有効であることを正当に評価した上で、その構造上の限界について言及している。」
「そうです。」
「ですが。」
高瀬部長がゆっくりと顔を上げた。
「なぜ今回、この問題を提起しようと思ったのですか?」
俺は一瞬、言葉を探すように思考を巡らせた。
「……数字が正しく合っていても、結果が破綻しているケースが存在したからです。」
「結果が?」
「孤独死です。」
高瀬部長の表情に、かすかな緊張が走る。
「……なるほど。」
「バイタルも、人との交流ログも、システム上はまったく問題がなかった。」
言葉を慎重に選ぶ。
「それでも、その人は自ら命を絶つか、誰にも気づかれずに亡くなっていました。」
「はい。」
「だから俺は、システムが出している数字自体が間違っているとは思わないんです。」
「では?」
「……数字の『見方』が、決定的に足りないんだと思います。」
高瀬部長は何も言わず、静かに俺を見つめている。
「数字は、その人間の状態のほんの一部を切り取っているに過ぎません。」
「……。」
「なのに、その一部だけを見て『この人は問題ない』とシステムが判断してしまうと――数字に表れていないもっと大切な部分を、最初から存在しないものとして切り捨ててしまうことになります。」
語りながら、自分自身の手首が少し冷たくなっていくのを感じた。
高瀬部長は、手元のレポートをゆっくりと閉じた。
「悠木くん。」
「はい。」
「それは、エンジニアとして非常に重要な指摘だと思います。」
ほんの少しだけ、肩の上がっていた力が抜けた。
「ありがとうございます。」
「ただ。」
高瀬部長が言葉を繋ぐ。
「我々は、人間の目に見えないリスクを可視化するために、数字というツールを使っているわけですから。」
「はい。」
「数字で捉えられないものを、我々はどうやって見つけ出せばいいと思いますか?」
「……。」
「はい。」
「これは、かなり慎重に書いていますね。」
「……そうですか?」
「ええ。」
レポートに視線を落としたまま、高瀬部長が静かなトーンで続ける。
「HUG+の現行システムそのものを否定しているわけではない。」
「はい。」
「むしろ、現在の仕組みが社会的に極めて有効であることを正当に評価した上で、その構造上の限界について言及している。」
「そうです。」
「ですが。」
高瀬部長がゆっくりと顔を上げた。
「なぜ今回、この問題を提起しようと思ったのですか?」
俺は一瞬、言葉を探すように思考を巡らせた。
「……数字が正しく合っていても、結果が破綻しているケースが存在したからです。」
「結果が?」
「孤独死です。」
高瀬部長の表情に、かすかな緊張が走る。
「……なるほど。」
「バイタルも、人との交流ログも、システム上はまったく問題がなかった。」
言葉を慎重に選ぶ。
「それでも、その人は自ら命を絶つか、誰にも気づかれずに亡くなっていました。」
「はい。」
「だから俺は、システムが出している数字自体が間違っているとは思わないんです。」
「では?」
「……数字の『見方』が、決定的に足りないんだと思います。」
高瀬部長は何も言わず、静かに俺を見つめている。
「数字は、その人間の状態のほんの一部を切り取っているに過ぎません。」
「……。」
「なのに、その一部だけを見て『この人は問題ない』とシステムが判断してしまうと――数字に表れていないもっと大切な部分を、最初から存在しないものとして切り捨ててしまうことになります。」
語りながら、自分自身の手首が少し冷たくなっていくのを感じた。
高瀬部長は、手元のレポートをゆっくりと閉じた。
「悠木くん。」
「はい。」
「それは、エンジニアとして非常に重要な指摘だと思います。」
ほんの少しだけ、肩の上がっていた力が抜けた。
「ありがとうございます。」
「ただ。」
高瀬部長が言葉を繋ぐ。
「我々は、人間の目に見えないリスクを可視化するために、数字というツールを使っているわけですから。」
「はい。」
「数字で捉えられないものを、我々はどうやって見つけ出せばいいと思いますか?」
「……。」

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