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君の体温は義務だった

第4章 接続

俺はふと思う。

このやり取りも、HUG+のログにかかれば「会話時間」として処理されるのだろうか。
たぶん、される。
俺と牧野が何秒間やり取りをしたか。それだけなら正確にデータ化できる。

けれど。
この数十秒の無駄話で、俺の気分がほんの少し軽くなったということ。
その温度は、一体どこに記録されるのだろう。

画面を見る。
カーソルが虚しく点滅を続けている。
俺は何も入力しないまま、静かにファイルを閉じた。

◇◇◇

昼前。
デスクの電話が鳴り、高瀬部長からの内線が入った。

『悠木くん、今大丈夫ですか?』
「はい。」
『レポート、できましたか?』
「できています。」
『では、申し訳ありませんが、こちらまで持ってきてもらえますか。』
「分かりました。すぐ向かいます。」

受話器を置く。
俺は大きく一度、深呼吸をした。

レポートをプリンターで印刷する。
打ち出された紙を端から綺麗に揃え、ホチキスでパチンと留める。

表紙のタイトルを見つめた。

『HUG+孤独死予防システムにおける数値化の限界について』

……やっぱり硬い。
けれど、もうタイトルを変える気にはならなかった。


部長室のドアを軽くノックする。

「どうぞ。」
「失礼します。」

室内に入る。
高瀬部長はPCの画面から目を上げ、こちらに向き直った。

「悠木くん、ありがとうございます。」
「こちらこそ、お時間いただきありがとうございます。」

印刷したレポートをデスクの上に静かに置く。
高瀬部長がそこに目を落とし、タイトルを追った。
ほんの少しだけ、眉が動く。

「……『数値化の限界』、ですか。」
「はい。」
「以前お話ししていた内容から、少し方向が変わりましたね。」
「……はい。」
「では、拝見します。」

高瀬部長はレポートを手にとり、めくり始めた。

一枚。
二枚。
三枚。

静かな室内に、紙が擦れる音だけが響く。
俺は口を閉ざし、直立して待った。

やがて。
高瀬部長のめくる手が止まった。

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