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君の体温は義務だった

第4章 接続

そこで指が止まった。

……これだ。

昨日までの自分なら、間違いなく「もっと数字を増やそう」としていたはずだ。
孤独率という一つの指標だけでは足りない。
だったら、人とのつながりを定量化する別の指標――『接続率』のようなものを新しく定義して組み込めばいい。

誰と。どれくらい。どんな頻度で。どんな関係を維持しているか。
それをアルゴリズム化すれば解決する。
昨日の俺は、本気でそう思っていた。

けれど。
数字をどれだけ増やし、精度を上げようと試みたところで。
その定義した数字の隙間から零れ落ちてしまうものは、必ずまた新しく生まれ出る。

だったら――数字を増やすことだけが、唯一の答えじゃない。

俺は文書を上書き保存した。

「……できた。」
「何が?」

隣から牧野の声が飛んできた。

「うわっ!」
「そんな驚く?」
「いつからそこにいたんだよ。」
「ずっといたけど。」
「怖いわ。」
「普通に仕事してただけなんだけど。」

牧野がオフィスチェアを少しこちらへ回転させる。

「レポート?」
「うん。」
「今日提出だっけ?」
「そう。」
「大丈夫そう?」
「……たぶん。」
「またそれ?」
「なにが。」
「悠木陽くんが『たぶん』っていう時は、だいたい大丈夫じゃない時のやつです。」
「失礼だな。」
「長い付き合いですからー。」

笑ってる牧野につられて、少しだけ笑った。

「まあ、なんとかなるよ。」
「それなら良し。」

牧野はそう言って、自分の画面へ視線を戻した。

ほんの一分にも満たないやり取り。
けれど、さっきまで張りつめていた胸の奥が、ほんの少しだけ解けた気がした。

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