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君の体温は義務だった

第4章 接続

◇◇◇


目覚ましが鳴った。

止める。
目を閉じる。

五分だけ。
そう思った。

次に目を開けた時、時計の数字は予定時刻を十二分過ぎていた。

「……最悪。」

跳ね起きる。

寝癖を直し、歯を磨き、服を着替えて顔を洗う。
持ち物の最終確認。
財布、スマホ、HUG Band。

「……よし。」

たぶん。たぶん全部ある。

靴を履き、玄関を飛び出す。
ドアを閉めた瞬間、手首がブッと小さく震えた。

嫌な予感がする。
画面を見る。


【睡眠時間:5時間48分】

【睡眠の質:やや低下】

【本日のストレス予測:上昇傾向】


「……朝から説教かよ。」


【本日のおすすめ】

十分な睡眠時間を確保しましょう。


「昨日言えよ。」



【昨夜も同様の通知を送信しています】

「……。」

言われていた。
完全に俺が悪い。


◇◇◇



会社に着く。
自分の席に鞄を放り出して腰を下ろすと、隣から声が飛んできた。

「ウッス!なんか顔死んでない?」
「朝から失礼だな。」
「いや、褒めてる。」
「どこが?」
「生命力がある死体って感じ。」
「褒めてないだろ。」

牧野がニシシと笑う。

「昨日遅かった?」
「ちょっとね。」
「また仕事?」
「まあな。」
「真面目だねえ。」
「牧野に言われたくないけど。」
「なんでよ?」
「昨日、定時五分前に『今日は早く帰ろ』って言ってたじゃん。」
「言った。」
「そのあと三十分くらい喋ってたろ。」
「それは必要なコミュニケーションですー。」
「仕事しろ。」
「それも仕事だよ。」
「便利な言葉だな。」

牧野がまた笑う。
俺もつられて少し笑った。

ほんの数秒。
それだけのやり取りだ。

でも。
昨日の夜、あれだけ頭を悩ませていたせいだろうか。
そのわずか数秒のやり取りが、胸の奥に妙に引っかかった。

会話時間に換算したら、たぶん一分にも満たない。
内容だって、取り留めのない無駄話だ。

それなのに。
さっきまでどんよりと重かった頭が、ほんの少し軽くなっている。

「……なあ、牧野。」
「ん?」
「いや。」
「何?」
「……なんでもない。」
「なにそれ、気になるじゃん。」
「そのうちな。」
「絶対言わないやつじゃん、それ。」

牧野がまた可笑しそうに笑う。
俺も苦笑いを返した。

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