
君の体温は義務だった
第4章 接続
◇◇◇
午後。
日常業務が一段落したところで、匿名化されたビッグデータを使って簡単な試算を始めた。
仮組みのモデル。
まだ正式なシステムに組み込むようなものではない。
ただ、「もし、こういう数字が存在したらどうなるか?」という実験だ。
条件を入力し、演算をかける。
画面に結果が表示された。
【接続指数:78】
「……高いな。」
別の被験者データを入れる。
【接続指数:64】
また別のデータ。
【接続指数:31】
数字は、実にそれらしく変動した。
人との交流が多い人間ほど高い。
継続的な関係がある人間ほど高い。
自発的な連絡を行う人間ほど高い。
「……いけるかもしれない。」
思わず呟いていた。
孤独率だけでは拾いきれなかった人間の温もりや社会性を、ほんの少しだけ可視化できている。
これは使える。
そう確信した。
本当に、そう思ったのだ。
——その瞬間までは。
画面のログをスクロールしていると、ふと一つのデータが目に留まった。
【接続指数:82】
「……。」
高い。かなり高い数値だ。
家族との交流履歴あり。
友人との定期的なメッセージ往復あり。
職場での会話量、標準以上。
定期的な外出ログあり。
趣味のコミュニティ参加歴あり。
継続的な人間関係の維持。
どれを見ても全く問題がない。
むしろ、社会的な人間関係としては理想的と言っていいレベルだ。
俺はそのデータの詳細ログを開いた。
この人物には、複数の強固な「つながり」が存在している。
なのに——
その人物は、自宅で孤独死していた。
「……え?」
思わず声が漏れた。
もう一度画面を見直す。データを再確認する。
バグでも入力ミスでもない。
匿名化された過去の事例記録。
死亡時のバイタルデータ。
生活ログ。交友関係。
どれをとっても、俺が作った接続指数を高く弾き出す条件を完全に満たしている。
なのに、結末だけが致命的に破綻している。
俺は椅子の背もたれから体を起こし、ディスプレイに顔を近づけた。

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