アシスタントで来ただけなのに…!
第1章 鬼才漫画家、市川ルイ
「あの…!明後日から来れるように頑張ってみます!」
先生は相変わらず冷たい表情のままだったが、頷いてくれた。
「分かった。僕の方でも準備を進めておく」
そう言うと、先生は私を横切ってスタスタと歩き部屋の扉を開けた。
「今日は帰ってもらって構わない。ゆっくり休むといい」
「…はい、ありがとうございました」
衣服が乱れてないか確認して、私は頭を下げて部屋を出た。
背後から扉が閉まる音がした。
窓を眺めると、もう夕方になっていた。
私は体を隅々まで弄られてからか、まだ夢だった市川ルイに会えて興奮してるからなのか分からない心臓の高鳴りを感じながら階段を降りた。
「…ん?」
階段を降りるとなにか異変を感じた。
「なんだ…この焼け焦げた臭い…」
私は異臭がする部屋に目を向ける。
そこは玄関から左手の部屋からだった。
「確か…あの部屋は入らなかった」
部屋の前に立った時、ひどく頭痛がして入らなかった部屋だ。
「火事…?もしかして中でなにか燃えてる?」
それだったらやばいのでは…?
私はすぐ引き返してルイ先生を呼ぼうとしたが、部屋の扉が自然とゆっくり開いた。
「…先生を呼ぶ前に確かめた方がいいのかな」
私は意を決して異臭のする部屋の扉の前に立った。
「っう…何この臭い…」
燃えた何かの臭いだ。焦げ臭い。
私はドアノブに手をかけて思いっきり扉を開けた。
「っきゃあああ!?」
目の前にボサボサの髪をした女が立っていた。
顔は焼け焦げて黒くなっている。
私はすぐさま部屋をあとにして玄関の方へ走った。
ガチャりとすんなり開いた玄関を通り、そのまま石畳の階段を思いっきり走り抜けた。
「っはぁ…はぁ…」
気づけば周りは森林に囲まれていた。
夕暮れの光が差し込み、陰湿な雰囲気からやっと抜け出せたようだ。
後ろを振り返ってみたが、何も無かった。
風が吹いて木々が揺れる。
私は驚きでドクドクと音を立てる心臓を抑えながら、
震える足で来た道を歩き、家に向かった。
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