
もしも、君を愛せたならば
第8章 リアル
〝あ、待ってね、
今コーヒー・・・〟
言い終える前に
和也は後ろから私を
ギュッと抱きしめた。
・・・・。
香水じゃない
男の人のいい匂い。
がっちりした胸板が
私の背中と密着する。
〝俺のこと好きになった?〟
〝うん・・・・
好き・・・。〟
和也は、また聞いてくる。
〝今日会ったばっかだけど?〟
〝それでも・・・好き〟
〝でも、俺まだ
夏帆のことは
良くわかんねーし
好きかどうかわかんない〟
〝うん・・・〟
そりゃそうだ。
和也の言う通りだ。
今日会ったばかりの男に
好きだなんて言ってる自分が
おかしいなんてことは
自分でもわかる。
〝・・・それでもいいよ〟
私は言った。
暫く沈黙が続き
キッチンの時計の針だけが
音を立てている。
