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燕尾服は似合わない

第3章 初めての仕事

「ふーん。それが今日の「仕事」?」

 正直拍子抜けした。
 楽じゃん。
 見てるだけなら俺もできる。

「「楽だな」…とでもお考えですか?」

「え…っ。

 お前、超能力者?」
 

「顔を見ればだいたいわかります。

 貴方はやはり馬鹿ですねえ…。」


 呆れたように肩をすくめる伊織を見て、思わず拳に力が入る。

面と向かって「馬鹿」と言われたのは初めてだった。

 ——だが、この感情さえも、伊織は見抜いていた。

「…この程度で感情を露わにしているようでは、退学の日も近いですよ。
 
 もう少し自分を制御できるようになりなさい。」


瑠璃色の瞳が冷たく俺を見つめる。
 
 ——身震いするほどに綺麗な瞳。
 見つめ続けると呑み込まれそうになるから、
 俺は無意識に目を伏せ、握った拳を緩めた。

 それを見て、伊織はクスリと笑う。
 
「上出来です。」

 見下されるのは腹が立つが、
 覚悟を決めた以上こいつらに従うしかない。

俺は誤魔化すように頭を掻くと、伊織に背を向けた。

「どちらへ行かれるのですか?」

「あ?クラスんとこだよ。
 言われた通り、王子…じゃねえ。
 
 …か、薫様の挨拶とてめえの動きを見に行くんだよ。」

 
「…その格好で?」
 

「はぁ?一応制服きてんだろ。」

 ん!と、胸元のシャツを引っ張り見せつけた。
これでも俺なりに守ってる校則だ。

 だが伊織は額に手を当て、呆れたようにため息をついた。

「あぁ…愚か…。

 "それ"で問題がないと本気で思われたのですか。」

 
「は?んだよ!これじゃねぇのかよ!ここの制服は!」


「仕方がないですねぇ。」

 伊織は諦めたように首を振った。
 
「執事初日なので、今回は特別にわたくしがご指導いたしましょう。」


 そういうと、俺の足元に視線を落とす。

「まず…その履き潰したローファー。

 今すぐ処分させていただきます。」
 

「はあ……?捨てんの?替えなんかもってねーけど。」

 思わず声が裏返る。

「ご安心ください。こちらでご用意させていただいております。

 あとは…。」


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