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会ってみる?

第2章 当日

両側に動物の檻がある順路を歩くと、中の動物も鳥類から哺乳類に変わっていた。

猛獣といわれる動物は、トラとツキノワグマで、あとはロバやアルパカ、カピバラなどのちょっと大きめの動物達が檻の中や柵で区切られた屋根のない広場でくつろいだり、こちらを見たりしている。

そのとき、田中が、

「あれ?何か落ちてる!」

と言って、こちらにお尻を向けて、それを拾おうと前屈姿勢になった。

僕は、それまで遅刻した負い目と田中のおそらく不機嫌であろう雰囲気により、緊張して、田中の体をよく見る余裕がなかったが、今、今日初めて田中のお尻を観察する機会が到来し、田中に色気を感じていなかった僕に、初めてその機会が訪れた。

前屈した田中のお尻を目の当たりにした僕の感想は、『良いお尻をしている』だ。細身の体のため、ウエストは引き締まりお尻の丸みが際立つ。そして、田中のパンツスーツのお尻には、下着のラインはない。たぶんTバックを履いていると思われる。

田中は体を起こすと僕の方を振り返って、

「落ちていたものはキーホルダーですね!どうしましょう?」

と言って、手で摘んで顔の前に上げて見せた。

僕は、お尻を見ていた視線を反らすと、周りを見渡したが人影はなく近くに落とし主と思われる人はいない。

僕は、

「あとで受付に渡しましょうか?」

と言うと、田中も、

「そうですね!カバンのここに入れておくので、私が忘れていたら言ってもらえますか?」

と言って、カバンのポケットに入れた。

そして、田中は、カピバラのいる柵に近付くと、カバンを持った手の逆の手を柵に置いてカピバラを眺め、

「かわいいですね!」

と爽やかに言った。

落とし物を拾ったり、カピバラを見たりして、不機嫌さは少し解消したのかもしれない。



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