
サメ狩り【3ページ短編】
第1章 サメ退治
飛び上がったサメめがけてリズの放った鉄の杭が貫いた
射出装置の衝撃で小さな身体のリズは後ろに吹き飛んだ
貫かれたサメも海面に落ちること無く、クレーンに吊るされる
決着は一瞬の出来ごとだった
タグボートの運転席から出てきたウィリアムは頭上に吊るされたサメの姿を見上げた
「本当に…やりやがった…」
目の前の光景を見てもにわかに信じがたかった
「ほらね、私の言った通り!
良かったわ、収入に有りつけて!
実は資金も底をついてたの!」
「お金で解決できるのなら、それに越したことはない
問題はお金ではどうにもならない事のほうが問題なんだ」
リズが“え?何の話し?”と言ったような表情をすると、後ろから近付いてきたウィリアムがリズの背中にスタンガンを撃ち放った!
え?という顔をしながら足下からリズは崩れ落ちた
「悪いね、報酬は約束するから!
問題はサメのほうでね、汚染まみれのサメを調べられたら私の後援者の工場に迷惑がかかるのでね、サマーフェスのほうはどうでも良かったのさ」
ウィリアムが説明したもののすでにリズの意識は無かった
「まぁ、キミの名誉はきちんとたたえておく事にしてあげるよ?ただし、サメは解剖されたら困るので“致命傷を与えて追い払った”程度にしておいてくれないとね」
ウィリアムが見上げたサメをよく見るとところどころに赤い腫瘍のようなものが全身に浮かび上がっている
その見た目のインパクトは地元企業の工場が垂れ流す廃棄物による海洋汚染はかなり深刻だと宣伝するようなものだ
「なんて醜い姿だ、私の息子にも海には入らないようにキツく言っておかないとな!
浮かれた観光客だけで十分だ」
そうウィリアムが捨てゼリフを吐いたその直後
クレーンで吊られていたサメがくわえていたマグロの半身を吐き出し、そのまま杭が外れた!
落下のきわになんとサメはウィリアムの頭へ落下
そのままウィリアムはサメの大きな口に吸い込まれるように呑み込まれてしまった!
サメはタグボートの甲板を転がりながらデッキから落下、海の底へ沈んでいってしまった
数時間後、市長の捜索で借り出されていた海上警察のボートが気絶したリズを見つけ出した
結局少女は十分な報酬を得られなかっただろう
おわり
