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サメ狩り【3ページ短編】

第1章 サメ退治


ウィリアムはどうしてこんなことになってしまったんだと船に乗ったことを後悔し始めていた

依頼の打診に来ただけなのに、いきなり海に出て、何か事故があったらすべて市長である自分に責任が課せられる
それも未成年の彼女にケガでもされたら、フェスどころか政治的なスキャンダルにも成りかねない

「やっぱり日を改めて、また職員から連絡させるから…」

「黙って!もう近くに居るわ!」

あたりは入り組んだ岩場の岩礁地帯だ

北と南の海流が島にぶつかるのか、波が高くなった

「このあたりで大食漢の大型のサメが居座り続けるには豊かな狩り場をうろつく筈
 きっとこの近くに潜んでいるわ
 船をお願い」

とリズは操舵をウィリアムに任せ、クレーンを操りマグロの半身を吊るすと自分は杭の射出操作の位置についた

「狩りはひとりでは出来ないの、オジイとのときもオジイが操舵で私が杭の役割だった、だから安心して!」

子供にそう言われてもな、と思ったがここまで来たら仕方がない
数回トライさせてほとぼりが冷めた頃に引き上げよう、なんせ舵はこちらの手にあるのだし

そう簡単にサメを見つけられないだろうとたかをくっていた
なぜなら先週地元の漁師たちに狩りの依頼をして、サメ退治の作戦を行ったばかりなのだから

しかもそれらは肩透かしで終わってしまった

地元の漁師たちいわく、“サメの居場所、サメ狩りの道具、サメの弱点などサメの事を知り尽くしているのはこのあたりでは単独行動好きの頑固者ジャックパールだけだろう”と聞いていた

しょせん漁師たちは定置網で漁をしてきた者ばかりなのだ

結局退治どころか、数日間無駄足に終わり彼らへの報酬だけが発生してしまい経費倒れな結果だったのだ

するとリズが静かに低い声を発した

「スロットルを静かにさせて!近いわ!
 でもエンジンは切らないで、停めたらダメよ」


数分後

海面がガバッ!と盛り上がったか思った次の瞬間

クレーンに吊られたマグロの半身めがけて巨大なサメがとびだしてきた!

「本当に出たッ!?」

「私の言葉を信じて無かったのッ!?」

「漁師たちは誰も見つけられなかったのに!」

「わたしはサメ狩りの娘なのよ!」

リズは杭を撃った

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