テキストサイズ

サメ狩り【3ページ短編】

第1章 サメ退治


若い市長が港にやって来た
近くの古びた民家に立ち寄る

「サメ狩りの名人ジャックパールさんはいるかね?」

中には無心に鉄の杭を磨き上げるひとりの子供

「お嬢ちゃん、ジャックパールさんを……」

チラリと横目に市長を見やると、再び元の視線に戻して一心に杭を磨きながらぼそりと少女はつぶやいた

「オジイは死んだよ、返り討ちに遭った」

少女は無感情に淡々と語った

「そうか、それはお気の毒に
 彼に“サメ退治”を依頼しに来たんだが…、
 仕方ない、おいとましよう
 私は市長のウィリアム、キミ名前は?
 見たところキミひとりのようだね、せめてもの施しとして民生のスタッフを手配しておくよ」

すると少女はくるりと市長のほうへ向き直った

「それは依頼だね?わかった
 その“サメ退治”私が引き受ける」

「な?何を言ってるんだ?そんなことひとつも言ってないぞ!?それにキミはまだ子供じゃないかッ!?」

目をひん剥く市長の背後の壁にドスッ!と鉄の杭を容赦なく突き刺した

「私の名前はリズ、わたしもサメ狩りの血筋なの!それに見た目は小さいけど幼い頃からオジイのパートナーとしてサメを駆逐してきたの、バカにしないで」


ウィリアムは呆気にとられてしまった…


そのままふたりは祖父が残したタグボートに乗り込み沖に出ていた

「船に乗ったからといってキミに仕事を依頼したわけじゃないぞッ!?」

「それじゃあ退治したら報酬を、
 何も出来なかったらただ遊覧船に乗ったと思ってくれていいわ

 ところで市長さんがわざわざオジイに依頼なんて何があったの?」

市長は渋い顔をしながら海を眺めていた

ウィリアムは任期3年目の新人市長で、当選直後から町おこしのイベントとしてサマーフェスを企画し、多額の収入を町にもたらせていた

だが今年は数か月前からのサメ襲撃事故が相次ぎ、イベント再開が危ぶまれていた

リズは半年前から地方のサメ退治の仕事の巡業をまわってきて、帰りの道中にサメの返り討ちに遭い祖父を亡くしたばかりだった

「地元の港でも襲撃があったのは知らなかった、知っていたら帰りの船で油断していなかったのに! なんにせよ、私にはお金が必要なのよ」

リズは正面を見据えて悔しい表情だった



ストーリーメニュー

TOPTOPへ