
微熱に疼く慕情
第12章 【盲目的な愛が辿る一途】
「綺麗になった」
「え…?」
「当時も綺麗だったけどね、驚いちゃった、更に綺麗になってて」
あの最後の日の事を再び謝罪されたけどもう良いの
蒸し返したくないし、もう忘れた…と言ったら切ない顔されちゃった
「お元気…でしたか?あの…」
「気になる?明島さんの事」
やはり顔に出ていたのだろうか
どんな顔をすれば良いのかわからなくなった
食事をしながら私が居なくなってからの事をゆっくり話し始めてくれた
「実は俺、あれからすぐ明島さんの会社から離れたんだ」
「え?」
「流石にね……俺も独立するタイミング逃してたし、良い機会だと思って思いきって打ち明けてみた、そしたらすんなり受け入れてくれたから……そこからは俺もそんな会えてないんだ、でも元気にはしてると思うよ、時々連絡くるから」
「そう…なんですね、良かった」
「俺を見ながら明島さんの事考えてるのモロバレだったぞ?」
「え、あ、ごめんなさい」
「いや、それが一華らしい」
黒崎さんはこの近くに個人事務所を抱えているらしい
今日はたまたま通りかかっただけで
「最高のプレゼント貰った気分」と言っていた
ほんの少し、ワインをお互いにグラス一杯飲んだだけ
私の近況も話したが何処に住んでるとまでは言わなかった
明日には帰る
ホテルの場所を聞かれて近くまで送って貰う事に
「今日、会えて本当に良かった」
「はい、私も」
「迷惑そうにしてたのに?」
「え、違っ、違いますよ」
「ハハハ、うそうそ、でもこうやってまた笑い合えて本当に今、心底嬉しい」
「……ですね」
恋人たちが行き交うスクランブル交差点
一番後ろの方で立ち止まる
「今、恋人は?」
「……居ません」
黒崎さんは?とは聞けなかった
未練があると思われちゃうから
