
微熱に疼く慕情
第12章 【盲目的な愛が辿る一途】
「他の人とは会ってない?あの時のメンバーとは…」
「会ってないです、会いません…もう」
「じゃあ、俺はめちゃくちゃラッキーだったわけだ?たまたま偶然、再会出来たんだから」
「それってラッキーなんですか?」
「ラッキーにしてくれないの?もしかして、また変な方向に考えてる?例えば、自分と出逢わなければ黒崎さんもまともな恋愛出来てたのに…とか?」
「え……」
心の声をそのまま拾われた気分
あのアルコール量でまんまと顔に出てしまっていたのだろうか
「当たり?エヘヘ」
「違わないでしょ…?もっと、違う出逢い方してたらまた違った未来だったと思います」
「それじゃ、意味ないんじゃない?」
「どうしてですか?」
「だって、明島さんのオマケだった俺だからこそ、一華は惹かれてくれたんじゃないの?ただ普通に出逢ってたらこんなオジサン見向きもしないでしょ」
「そ、そんな事……」
ギュッと手を握られた
人混みだからとそっと引き寄せてきて顔が近くなる
「もう遅い?一華の中に俺はもう居ない?」
「黒崎さん……」
また、この人の瞳の中に映る事が出来て安堵?
何故、私は動けなくなるんだろう
もう遅い、そう言えば良いだけなのに
頬に触れてきた手が、零れ落ちた涙を拭う
人混みから少し外れて盾になってくれた
「こんな一瞬で、また俺の心を奪ってくんだな」
「違…っ」
「違わない、忘れた日はなかったよ、また出逢えた、本当はもう帰したくない、やっぱり一華が今でも好きなんだ」
キスされそうになって間一髪、掌で止めた
「酔える量じゃなかったのに…ダメですよ、黒崎さん」
「え、全然シラフだけど?それで口説いてる」
「え…?」
止めた手を退けられ、唇が重なってしまった———
