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微熱に疼く慕情

第12章 【盲目的な愛が辿る一途】






ゆっくり顔を上げると、一気にあの頃に引き戻される
どれだけ時間が経っても当時の記憶は塗り替えられない
潤んだ瞳がとらえる人物



「あ………お久しぶりです」


「お友達と?」


「あ、えっと、同じ会社の後輩です」



そう言うと美樹ちゃんの方から自己紹介してくれた
私がしどろもどろになって彼を美樹ちゃんに紹介するから「もしかして元カレさんとかですかぁ?」って揶揄われた



「付き合ってはなかったよね?俺が一方的に好きで居たんだけど、全然靡いてくれなくて」


「キャッ!そうだったんですか、あ、じゃあ、この後、お二人で?」


「ちょ、美樹ちゃん」


「え、攫っちゃって良いの?」


「黒崎さんも何言ってるんですか」


「ハハハ、今日は遠慮しておくよ、でも後日、ちゃんと時間空けてみてくれない?此処で会ったのも何かの縁だと思うし」


「いや、明日の夜には帰っちゃうんで、どうぞどうぞ、先輩、私は先にホテル戻ってますから」


「え、ご飯は?食べに行くでしょ?」


「何言ってるんですか、ホテルで何なり済ませますよ、先輩のチャンス潰したりしませんから」って耳元で言われて、完全に誤解してる


「本当に良いの?ちゃんと責任持ってホテルまで送るからちょっとだけ、行かない?」



強引な誘いに結局負けてしまった
食事だけなら、と念押ししたのに
人混みではぐれないようにと手を引かれてしまう
すぐに何処かに連絡していてレストランで席を確保したようだ
言葉がなくても体温で伝わる
あの頃の優しさは変わらないみたい



何から話せば良い…?
まさかこんなところで会うなんて想像もしなかったから、頭の中が真っ白だよ
女性の扱いもスマートで、話し方や振る舞いも当時のまま
3年なんて月日、経ってないんじゃないかって錯覚さえする




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