
微熱に疼く慕情
第12章 【盲目的な愛が辿る一途】
「凄い……どうしたの、コレ」
「友達にも頼んで応募しまくりました、抽選で2枚ゲット出来たんで、めちゃくちゃ運が良かったみたいです」
「行こうよ、一緒に」
「え、でも……僕とで良いんですか?」
「何で?寧ろ旺志郎くんと行くべきでしょ、誕生日近いって言ってたし」
「ありがとうございます、実は…ライブ当日が僕の誕生日でして…あ、それじゃ、僕へのプレゼントみたいですね、すみません」
「じゃ、絶対に行こう、楽しみにしてる」
コレを取るのにどれだけ頑張ったんだろう、とか
友達に頼み込んでまで用意したかったんだな、とか
ツアーの告知見てコレだ!って思ったんだろうな、とか
私が他の人と行くって言ったらどんな顔したんだろう、とか全部頭に浮かんでしまう
「じゃ、帰ります」って後退るから思わず手を掴んでしまった
あ……どうしよう、何も考えてなかったや
この後の展開、どうする…?
「今日の事は気にしないでください、当日、僕も楽しみにしてます、じゃ……おやすみなさい」
「帰っちゃうの…?」
ヤダ、私、何言ってるんだろう
最初の苛つきは何処に行ったの?
別れを惜しむなんて都合が良過ぎる
この手を離せば済む事なのに……
「はい、今日はこの後、友達とご飯食べる事になってて」
「あ……そっか、何かごめん、それなのに来てくれたんだね、だいぶ待たせたんじゃ」
「いえ、そんな待ってないですよ、大丈夫です」
「プレゼントありがとう、お花も」
旺志郎くんは何事にも見返りを求めない人
凄くピュア
こんな自分だから余計に、汚しちゃダメな人だなって思う
それでもこの手を離せないのは
だらしない私が、不誠実な私が……
真っ直ぐ過ぎるあなたに寄り添ってて欲しいから
ほんの一瞬でもよそ見しないようにこっちを見ていて欲しいから
踵を上げて触れるだけのキスをして、ようやく手を離した
