
微熱に疼く慕情
第12章 【盲目的な愛が辿る一途】
「……会えないって言ったじゃん」
最寄りの駅で待ち伏せしていたのは旺志郎くん……
マスクをしていてもイケメンだとわかる佇まい
「急にごめんなさい……でも、明日だと言えないから今日どうしても会って言いたくて、あ…すぐに帰るから」
駅前はまだ多くの人が行き交う時間帯
そっと腕を引いて端っこに移動する
「ん?言いたい事って?」
私、性格悪いからこんなサプライズは喜ぶ方ではなくて、イレギュラーされた事に苛立っていた
でもそんな私の思いとは裏腹に一輪の花を差し出し、彼なりに想いを伝えに来てくれた事を知る
「お誕生日おめでとうございます」
「え?」
「明日だけど、明日は当直で会えないから1日早いけど…」
自分ですら忘れてた
あぁ、そうだ、私、明日、誕生日か……
え?何で、知ってるの?
あ、入院してたからか
誰にでも言う事じゃないし
聞かれても適当に誤魔化してた
プレゼント貰っても置き場所に困るし
こうしてサプライズしてくる人も居るだろうから
誕生日という記念日は最初から外してた
「クスッ…ありがとう、知ってたんだね、誕生日」
「あ、ごめんなさい、入院手続きやら何やらで自分と近い日だったから覚えちゃってて……流石にキモいよね、ごめん」
「ううん、嬉しい、最近忙しくて誕生日すら忘れちゃってた……」
「忘れちゃダメだよ、この世に生を受けた大事な日なんだから、僕にとっても大事な日です」
一輪の青い薔薇と少しだけかすみ草が包装されている
良い匂いだし初めて貰った
「後、コレも…」と白い封筒も差し出された
「え、まだあるの?」
「寧ろコレがプレゼントです」
何だろ、と中を開けてみるとびっくりした
それは今では絶対取れないと言われている人気グループのコンサートチケットだった
しかもドームの!!
好きだって言ってたの覚えてたんだ……
ヤバ、泣きそう
