
微熱に疼く慕情
第11章 【普遍的な真理】
カクテルを一口飲んで耳を傾ける
「今日、山岸課長と非常階段に居ましたよね」
ストレートにくるね
まどろっこしくないのが良い
「居ましたね」とあっさり認める
「こっそり見たのはごめんなさい、でも山岸課長とだなんて…」
「何で…?不倫じゃないですよ?」
「付き合ってるの?それとも、大人の関係…?」
「さぁ…?まだ谷川さんには教えてあげない」
「え、ズルいよ、俺の気持ち知ってて…」
「知ってるも何も、最初から言ってるじゃないですか、大人の関係ならOKだって」
「それじゃ、意味ないよ」
「どんな意味です?」
「俺は欲深いから付き合う子には俺だけを見ていて欲しいし、俺もその子だけを見ていたい」
「え、ヤバ……その考えはヤバいですね、手に入れられないくらいが丁度良かったりするんですよ、片想いの方が幸せだったり、近くにあり過ぎて有り難みが薄れていく事も多いじゃないですか」
「でもこの人だ、って思えば独占したくなるのが普通でしょ?そんな人に出逢った事なかった?」
「うーん、執着しないんですよね、私って」
「じゃあ、そういうの全部取っ払って俺と恋愛してみようよ、俺も全力で口説いていくから」
ぷはっと声を出して笑ってしまった
カクテルのおかわりももらって
こうも話が合わない人といくらでも飲めるようになった私は、共感はしないけどニコニコして聞ける
やがてカウンターの下で手を重ねて……
「でも結局、今日の山岸課長に嫉妬したんでしょ?」
「そんな事は………うん、嫉妬した」
「んふふ、お酒回ってきた?」
「うん……ちょっと」
「出ようか?」
「え、まだ話終わってない」
「口説くのはまた今度」
「えぇ……」
