
微熱に疼く慕情
第8章 【壊れていく劣情】
「おーい、参ったな……」
困らせてるのもわかってるけど今は……
ほんの少しで良いから寄り掛からせて
人肌が身に沁みる
あんな風に逃げてきちゃって
もう帰ってもこの後泣きじゃくるだけだよ
仕事も行く気がしない
酷い顔になってると思うし
「寝てる?おじさん帰るよ?早くタクシー戻らないとだし」
そう聞こえて顔を上げたら至近距離に運転手さんの顔があって、シワのある顔、白髪混じりの髪と髭、何歳くらいかな……多分、還暦は過ぎてそう
「お客さん?大丈夫?」
声、好きかも……
「まだ………帰らないで」
「え?んん…っ」
あぁ……私、本当にバカだよね
運転手さんに欲情して唇押し付けてる
一人になるのが怖かった
勿論、抵抗されたよ
フラついて壁に当たってズルズルとしゃがみ込む
結局、ベットまで運んでもらって枕元にお水まで用意してくれた
手を離さない私に困り果ててた
「美味しいお店、教えてください…」
「今?えーっと、今話して覚えてるの?」
「ん……寝たらそのまま帰って良いですから」
誰かの話し声を聞いていないと寂しくてどうにかなりそう
心地良くて、好きな声だった
正直、全然覚えていない
どんなお店を紹介してくれたのか
ネクタイに手を伸ばしてグイグイ引きつける
もう一度キスしたらすんなり受け入れてくれたよ……
「コラ」って言われたけど舌絡めてくれた
ベットから運転手さんの方に滑り落ちる
尻もちついたから乗り上げる形で密着した
こんな事、お酒も入ってないのに出来ちゃう自分に呆れてしまうよ
心の隙間を今すぐ誰かに埋めて欲しい
誰でも良い訳じゃないけど、この運転手さんなら良いと思った
「本当、ダメだよ……ね?」
「ん……硬くなってるよ?」
お尻に当たってるよね?これ、何?
