
微熱に疼く慕情
第8章 【壊れていく劣情】
「おーい、盛り上がってるとこ悪いけど、俺の存在忘れてない?」
………空気の読めない奴め
「良かったね、理解のある彼氏さんで」ってお願いだから割って入って来ないで
真横に立って髪を撫でて来ないで
鏡に映る3人を見せてくる
「ほら、3人も悪くないね」と大智だけが笑ってるよ
しっかり手と手を取り合ってる私と先輩に対抗してか、私をバックハグしてきた
「ちょっと…」
抵抗する私の頭上で大智が先輩に言う
「俺、痛いほどわかりますよ、手放したくない気持ち……本当、男泣かせなんすよね、一華って……もう本当の自分に気付いたんだあなたも、俺も受け入れる覚悟するから、一旦、それぞれを認め合ってみません?俺と一華、彼氏さんと一華、俺と彼氏さんと一華って感じで」
え……何言ってるの?勝手に進めてる?
でも、言いたい事、全部代弁してくれてるかも……
先輩は私を覗き込んできた
「俺は一華が苦しくなければ、笑ってくれてたらそれで良い」
そう言ってくれて、後ろの大智も離れてくれた
「ほら、ちゃんとお前の口から言いな?」って諭されてしまう
再び見つめ合って優しい顔される
「私は……苦しくない、ズルいのは百も承知だけど、隼人さんにも大智にも……愛されたいって思う、2人から愛されたらどんなに幸せだろうって……ごめんなさい、やっぱりどちらかなんて選べない」
言ってしまった
想定内だったんだろうか
驚く様子もない
本当に受け入れようとしている
止めるどころか拍車をかけてしまった
救いようもないアバズレ女に何が残るの……
「俺も彼も責めたりしないよ、責める資格もない、一華が決めた事に尊重するよ、一華が俺らを手懐ければ良い」
「そうそう、俺たち何だかんだ言ってそれが嬉しいんだよ」
馬鹿じゃないの…?本当に言ってる…?
この関係を肯定してしまうの…?本当に良いの…?
