
微熱に疼く慕情
第6章 【耽溺していく欲情】
今週は金曜日に来て泊まってそのままお互い休日出勤
締め作業があるから私も土曜出勤して他の曜日でシフト調整している
そのシフトも先輩と合わせてる
それも皆に共有してるんだけど、昨日みたいな突然のイレギュラーが起きないように願う
あれから連絡は入らないし会えない日が続いてる
こちらから連絡するのも明島さんの手前、気が引けてしまう
また妬かれても困るしね
でもいきなり来てさらわれちゃう……なんてシチュエーションに心奪われてしまう事もあるんだよ
定時終わりに(お疲れ様です)って先輩に送りながら駅に向かおうとしたら「一華ちゃん」と呼ばれて手首を掴まれた
声や背丈でわかる
手を引かれたまま助手席に乗せられた
無言で走り出す車内で
「あの、黒崎さん?」と声を掛けても反応がない
え………怒ってる?
嫌だな、この空気………無理やり、抱かれちゃうの?
何も言ってくれないので窓の外を眺めた
心を落ち着かせようと小さく息を吐く
急に脇道に停車したかと思えばギュッと手を握ってきて言うの
「会いたかったの、俺だけ?」
「え…?」
こんな顔…初めて見た
怒ってるみたいだし泣いてるみたいだし
悲しんでるようにも見える
「あの人が居ないと会えない?」って覗き込む
その場でスマホを出して
今から黒崎さんと会います…と文字を打った
そのまま見せて
「この人には嘘はつけません……それをわかってて乗せたんですよね?」と意地悪な言い方で攻めちゃう
「送りますね」って言ったら「質問に答えてよ」と
押そうとした手を止められた
えっと……質問
「会いたかったですよ?前は会えなかったので申し訳ないなって……明島さんが居ないと会えない訳じゃないです、でもちゃんと報告はしておきたいです」
そういう関係だから……
