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碧と朝陽

第14章 悪夢

パシンッ

軽い音が玄関に響く。
なんだろう、と思った瞬間、頬に痛みを感じた。

殴られた。

「誰が出して良いって言った?出すなって言ったよな?」

痛む頬を抑えながら、見上げると、怖い顔をした郁人がいて、全身が震え出す。

「あ、ああ、ごめんなさい、ごめんなさい、許してください、ごめんなさ、」

パシンッ

また頬殴られる。
痛い。怖い。

「ひっ、ご、ごめ、」

「朝陽、これはプレイなんだ。言う通りにしないとダメだろ?お仕置きが必要か?」

“お仕置き”という言葉に心臓が脈打つ。
碧から聞いた“お仕置き”とは全く別の言葉に聞こえた。

腕を強く引っ張られ、部屋の奥に連れて行かれる。

「やだ、やだ!!!」

「言うこと聞けっていってんだろ!!」

最後の力で、強く抵抗したが

ドカッと強く拳で頭を殴られ、体が縮こまり抵抗できなくなる。完全に体が郁人の言いなりになってしまったように感じた。

と、

ブーーーブーーー

急なバイブ音。
俺のズボンのポケットからだ。

スマホ!!!!

俺はハッと我に返り、音に驚いた郁人の隙をついてスマホの画面を確認した。

碧!!!!

そこには碧の名前。

俺は迷わず応答ボタンをタップした。

「おい、てめぇ!!!なにやってんだ!!」

郁人が叫ぶのと同時に碧と繋がる。

『ごめん、急に電話、朝陽家着いた?』

碧の優しい声。
俺は自然と涙が溢れる。

「あ、碧助けてっ」

「このくそ、」

郁人が俺からスマホを取り上げる。

『え、朝陽??どうしたの??大丈夫??今どこにいるの!?』

焦った碧の声。

「助けて!!!」

俺はとにかく叫ぶしかなかった。
ドカッと強く郁人に蹴飛ばされる。

「うぐっ、」

郁人は通話を切り、スマホの電源を落としてしまった。

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