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碧と朝陽

第14章 悪夢


あの後は少し休んでからホテルを出た。
離れ難い気持ちを誤魔化して、碧に「また学校で」と言って別れた。

あれから碧とは何度かプレイをしている。
どのプレイも心地よく刺激的だった。

今回のも……凄い気持ちよかった………。
思い出すと頬が熱くなる。

最近は薬を飲まなくても常に体調が良いし、体が軽い。
俺は思わず鼻歌を歌う。

「〜〜♪」

「ずいぶんご機嫌じゃないか、アイツは新しいパートナー?」

と、後ろから突然声をかけられる。
聞き覚えのある声に、俺はぶわっと冷や汗をかく。

「な、なんで」

後ろを振り向くと、案の定見知った顔が立っていた。

月野郁人(つきのいくと)

俺が高校の頃、パートナーだった男だ。

「お久しぶり、朝陽。酷いじゃないか、俺に黙って新しい彼氏なんて作ってさ」

郁人は大袈裟に悲しむフリをする。

「別に彼氏じゃないから…」

「じゃあ今もフリー?」

グッと郁人に寄られて緊張で体が固まる。
う、動けない。

「フリーなら、また俺としようよ。朝陽とは相性よかった。だろ?」

相性が良い……??
俺がお前のプレイに合わせて我慢してただけだ。こっちは一ミリも気持ち良くなんてなかったんだ。叫びたい気持ちにかられるがうまく声が出せなかった。

「い、いや俺、今はいい……」

精一杯の反論だった。

「はーー?別にいいだろ?高校の頃は何度もやったんだしよ。俺たまってんの。そこでちょうど良くお前見つけたってわけ。」

「や、やだ…」

「いいから、相手しろよ」

「っ!?」

低く脅すように言われて、俺はもう何も返すことができなかった。
ぐいっと腕を引っ張られ、どこかに連れて行かれる。

抵抗する力もなかった。

頭の中ではずっと、碧、碧、と碧の名前を呼んでいて、あの時意地を張らずに、「もっと一緒にいたい」と言えていたら、今頃まだ一緒にいれたかもしれない。というありもしない妄想をしながら、俺は郁人に身を委ねていた。

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