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碧と朝陽

第5章 忘れられない

授業が終わるとやっぱり碧はこちらに寄ってきた。

「次の授業はどこ?」
「4号館……」
「俺も!一緒に行こうよ!」

あんなことがあったのに碧は何も気にしてない風だった。

「昨日の…」

いいかけてやめる。俺ばっか意識してるのは恥ずかしい。

「なんて?」
「なんでもない!!」

無事に全ての授業が終わり、帰る準備をしていると、
「朝陽、今日も帰りどっか寄って行かない?」
少し真剣な顔した碧に呼び止められた。

〜〜〜〜

昨日のカフェ。
また同じコーヒーを頼む碧。
昨日のことが思い起こされて少し恥ずかしい。

「な、なんだよ」

沈黙が堪らず俺は声をあげた。

「あ、ごめんごめん。」

誘ったのは碧の方なのに昨日とは違って少し遠慮気味だ。やっぱり碧も昨日のこと気にしてる?
牛乳たっぷりのカフェラテを口に含む。

「あのさ、昨日のことなんだけど」
やっぱり!!

「俺は朝陽とのプレイすごく心地良かったんだ。」

思わぬ言葉に驚く。
あんな簡単なコマンドで、碧も……?
いやいや、“も”ってなんだよ!!

「お互い特定の相手はいない、だろ?俺たち…」

「パートナーにならないか?って?」

思ったよりも冷たい声が出て自分でも驚く。
碧もハッと顔をあげた。 

「俺はパートナーはいらないんだ。でも昨日のプレイは俺もその、気持ちよかったよ……」 

碧を傷つけないようもごもごと言葉を紡ぐ。 

「だったら…」

俺は財布から千円札を取り出して机に置く。

「朝陽?」
「ごめんな」

席を立つ。

「まってよ」

腕を掴まれる。強引なようでこちらが痛くないように加減しているのが伝わる。ほんと良い奴。
「また明日な」
俺はカフェを後にした。

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