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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 62 アパートへの道すがら…

 コツ、コツ、コツ…

 夜道に美冴さんのヒールの音が響いている。

「ねぇ、どっち?」
 小さな路地の十字路で先を歩く美冴さんは立ち止まり、振り向いて訊いてきた。

「あっ、そこを左です」
 僕はその振り向いた美冴さんのシルエットの美しさに少しドキドキとしながら応える。

「ふうん、この通りに出るんだぁ」
「あ、はい…」
「やだわぁ、本当にすぐ近くに住んでいたのね…
 しかも、この通りは駅に向かう時は必ず通るし…」
 美冴さんは少し驚いた様子でそう言ってきた。

「本当は、どこかですれ違っていたのかもねぇ」

「……そ、そうですね」

 確かに、そうかもしれない…
 僕は本当に美冴さんのすぐ近所に偶然住んでいたのだ。
 同じ街の風景を見て、そして同じ街の空気を吸っていたのであった。
 それには少し感慨深い想いがしてきていたのである。

「ねぇ、どうしてこの街を選んだの?
 他に大学の近くは沢山あるじゃない」
「あ、はい、ただ単純に、地図を見て決めちゃいました」

「あら、そうなんだぁ…
 なんか可笑しいわぁ…
 あ、でも、何か不思議な導きだったのかもねぇ…」
 と、笑いながらそう言ってきた。

「不思議な導き…」
「和哉の執念かなぁ」
 
 夜風が気持ちよかった…

「あっ…」
 すると美冴さんは小さく呟きながら立ち止まる、そしてある方向を見て何かを考えているようであったのだ。

「うーん、そうだっ
 和哉は運転免許証持ってるよねぇ…」
 唐突に訊いてきた。

「もちろん持ってます…
 帰省するとよくクルマ載ってますよ」
 北関東の地方都市ではクルマ無しでは生活できない…
 
「うん、そうかぁ…
 明日って、何か予定あるの?」
 更に唐突に訊いてきたのだ。

 えっ、なんだろうか…
 そう想い、美冴さんの視線の先を追うとそこにはレンタカー屋があった。

 まさか、ドライブの誘いなのか…

「いや、予定は無いですけど…」

 明日は11日、明日までは帰省している嘘を真実についていたから予定はなかった…

 その嘘は、美冴さんを待つつもりでいたからついた嘘であったから…





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