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シャイニーストッキング

第16章 もつれるストッキング5  美冴

 76 揺らがる紫煙…

「ふぅぅ…」
 私は、そんな想いを逡巡しながらタバコを吸い、紫煙を吐き…
 傍らで寝落ちしている、いや、堕ちた女神といえる美冴の姿を見つめていた。

 そして、ふと…
 ゆかりは必ず、タバコを吸うとフッと目覚めるんだよなぁ…
 あ、そういえば、この前の律子も起きたんだっけ…
 そんなことが思い浮かんでくる。

「はぁ、ふぅぅ…」
 だけど、美冴は起きないな…
 そう思いながらリビングへ行き、冷蔵庫から缶ビールを取り、そんな吐息を吐きながら、グイっとビールを半分ほど飲み、そしてベッドルームに戻ると…

「あ…」
 美冴が…
 いや、美冴も起きていた…
 うつ伏せとなり、顔だけをコチラに向けて目を開き、私を見つめていた。

「う…ぅぅ……」
 美冴はそんな吐息を漏らしながら、ゆっくりと両手を着き、上半身を起こし…
「はぁぁ………」
 再びゆっくりと息を吐く。

 そして気だるそうに左手で乱れた髪を掻き上げながら…

「………………………」

 私を見つめ…

「あぁ……ふぅぅ……最悪だ…わ……」
 そう、小さく呟いた。

「え…」
 私は、その美冴の囁きに、ドキっとし…

「あぁ…ひどい……夜………」
 続けての、その呟きに、胸が騒ついてしまう。

 またなぜか灰皿には、消した筈のタバコが再び点いており…

 ゆらゆらと紫煙を揺らがせていた…

 どうやら、私がリビングに行ってる間に、美冴が消した半分のタバコにまた再び、火を点けたのだろうと思われる。

 それは美冴の…
 あの『バー波道』のカウンターで、何度か行った不思議な行いの再現…
 いや、それはおそらく、亡き彼との会話の儀式。

「ふぅぅ…ホント……ひどい…夜だわ………」
 そしてまた…
 私が引き裂き、ボロボロなただのナイロン繊維と化してしまった自身の伝線の走るストッキング脚を見つめながら…
 もう一度、そう呟いてきたのだ。
 
 最悪な…
 ひどい夜…
 いや、長い夜は…
 まだまだ終わりそうにない…

 そして美冴の目は…
 まだ妖艶な輝きに濡れていた。
 
 

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