テキストサイズ

シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 73 仕掛け…

 これから本社に戻って、この大原浩一という、わたしにとっての最愛の男の最大のライバル、恋敵である佐々木ゆかり準備室室長との対峙…
 つまり、そのスイッチをしっかりと入れなくちゃならない。

 そしてわたしのその想いと同じ思いをどうやら大原常務も抱いている様で…
「あ、そういえば、ほら、ゆ、あ、佐々木室長に説明するのは、な、何時からなんだっけ?」
 と、笑えるくらいに動揺した面持ちと声音で訊いてきたのである。

「え、あ、あぁ、はい…」
 わたしは彼のそんな絵に描いた様な動揺の様子に、思わず可笑しくなってしまい…
 自分自身の肩の力がスッと抜けたのを自覚した。

 そう、そうよ、目の前で彼女とわたしが対峙をするんだから、彼が一番緊張を、いや、緊張しているに違いないわ…
 と、わたしはそんな彼の様子を見てそう思う。

 そしておそらく…
 そう、おそらく…
 彼女、佐々木ゆかりもきっと大原常務と共にいるであろうわたしの存在を予想をし、既に緊張をしているに違いないはず。

 なぜならば、それは…

 わたしが今まで仕込み、仕掛けてきていた…
 そう、あの夜に、彼、大原浩一を奪うと決め、決意してから仕掛けた…
 彼がいつも微かに纏っているであろうシャネルの香りの変化と最近のネクタイの嗜好の変化。

 必ずや、あの佐々木ゆかりという女は、いや、彼女ならばきっとその微妙な彼の変化に気付いている筈であるから…
 そしてそれに間違いなく、今日、対面、対峙した瞬間に彼女ならば気付く筈なのだから。

 そう、それがわたしからの宣戦布告の仕掛けだということを…
 いや、もう既に始まっているわたしからの先制攻撃であるということに必ず気付く筈なのである。

「何時からがよろしいですか?
 いちおう、本社に戻る頃合いを見てこちらから連絡する手筈にはなっていますけれども…」
「あ、そ、そうなのか?」
「はい、それにもう本社の、あのシステム情報部には詰めている筈ですから…」

「う、うん、そうか、じゃぁ…」
 と、彼は腕時計を見ながら…
「今午後2時少しだから…
 30分後、うん、3時少し前にするか」

「はい、かしこまりました、では連絡しますね」
 と、わたしは携帯電話を手に立ち上がり、席を外して彼女に電話をかける。

 そしていよいよ…
 わたしの闘いが始まるのだ。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ