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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

  125 流れ…

 仕草…
 そう、正に彼女の今の行動は仕草、いや、私を必死に誘惑しようという必死の演技とでも言い表せるであろう。

「え、あ、そ、そんな、わ、わたしは疲れてなんかは…」
 そして彼女もまた明朗な女性なのだと思われ…
 既に心が落ち着いた私のそんなイヤミを含めた言葉の意味を素早く察知し、僅かに動揺の色を見せながら呟いてきた。

「そうかぁ、でも私は少し疲れたから、今夜はここでホテルに戻るよ」

 実は…
 散々と彼女のこの魅力に魅了されてしまい、心を著しく揺らがせてしまった意味でも本当に疲れていたのだ。

「あ…で、でも、し、支社長に怒られちゃう…」
 そして彼女、新潟支社永岡支社長専属秘書の竹下雪恵くんは下を向きながらそう呟く。

「いや、大丈夫だよ、上手く永岡さんにはちゃんと言い繕っておくから…
 さぁ、帰ろうか…」
 そう囁きながら、私は彼女の肩を押した。

 そして私と彼女は待たせておいたハイヤーに乗り込み…
「グランドホテルまで頼むよ」
 と、私が運転手に告げる。

「はい、かしこまりました」
 おそらくは、この時点での運転手の内心は…
 このままいつもの接待の流れでの、彼女と共にホテルへ向かうのだと思っている筈であろう。

 だが僅か5分も掛からずにグランドホテルの玄関前に到着した時に…
「じゃ、今夜はありがとう、また、明日…」
 と、そう私が彼女に告げて一人で降りようとした瞬間、その運転手は驚きの表情を見せてきたのだ。

 それはそうであろう…
 VIP扱いの私が一人で、彼女をハイヤーに置いて降り様としているのだから。

 
「あ、お待ちください、せめてフロントまで送らせてください、じゃないと…」
 するとすっかり車内では無言で俯いていた彼女も、慌ててハイヤーを降りてくる。

「いや、いいよ、大丈夫だから」

「いえ、ダメです、ちゃんとお見送りさせてください」
 そう彼女は言い張り、一緒にホテルの玄関に入ってきた。

 そして二人でロビーに入る…

「あ……」
 すると、ロビー奥のフロント前には、凛とした美しい立ち姿の律子が立って待っていた。

 だが…

「え?」

 あ、あれは?…

 そしてその律子の隣には…

「あ、青山くんか?」

「え、あ、か、一也さん?」

 律子の隣には昼間面談した青山一也が立っていたのだ…



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