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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 123 秘書 松下律子(33)
 
 これこそが、この会社の旧態依然とした男尊女卑のせいであり…
 いくら成果を上げていようとも、こんな枕営業を推進していたという事実は許せない。

「全ては真中前常務の…」
 確かにそうであった。

 そしてそれを、それらの腐った社風を、いや、この会社を根本的に改革し生まれ変わらせる為の…
 大原常務就任であるはず、いや、あるべきなのである。

 だからそんな青山さん曰くの誘惑にはそう簡単に、いや、絶対に引っ掛かる筈がない…
 それに永岡支社長にはどうやら秘書課に愛人までもいるらしい。

「あ、愛人?もぉ最低だわ、じゃぁ真中前常務にも?」

「いや、ヤツは毎回来る度に違っていたかな?」

「それをアナタ、青山さんは黙って指を咥えて見ていただけだったんですか?」
 思わず問うてしまう。

「い、いや、でも、一人では…」

 確かにそうだとは分かってはいたし、いや、十分わかっているのだが思わずそう云わずにはいられなかったのだ…
 それに、いや、わたしだって内情を全く知らない赤の他人様に二人の関係を知られてしまったならば大原常務の愛人にしか見られないであろう。

 だからそんな自分を棚に上げてそう青山さんを一方的に非難するのは間違っているのは分かってはいるのだが…
 ついそう云ってしまったのだ。

「ごめんなさい、そう、そうですよね、一人じゃ、それも新潟支社という地方に飛ばされてしまってはね…」
 慌てて少し反省しそう言い繕う。

「いや確かにそうで、情けないんですけどね…
 でも、何とかこの支社内での力を付ける為に秘かに資産運用実績を上げながら社内での発言力を高めようとは自分なりにはしていたつもりだし…
 それに何とか………」
 そう言ってくる彼の思いは実は十分に伝わってはきていた…
 ただ、全てはわたしのまだまだ若くて甘い、そしてオンナという弱い部分が大原常務というカレに対しての心の揺らぎがつい青山さんにそう一方的に云ってしまっていたのだと思われる。

 わたしはまだまだ甘くて弱いのだ…
 それにまだ完全にはカレ、大原浩一という男を、いや、オトコを信じ切れてはいないのかもしれない。

 そしてそれは常にチラつくあの女の…
 佐々木ゆかりという存在に対しての弱さなのかもしれない…

 ブーブーブー…
 その時携帯が着信した。
 
 

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