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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 120 秘書 松下律子(30)

「いきなりの新潟左遷だったから寂しかっから…」
 だがわたしにはそう呟く彼はからはやはり…
 そんな簡単な言葉の意味だけではないように感じられた。

「とりあえずはこっちに独りで来たから寂しくてちょうど良かったんですよ」

 いや違うだろう…
 わたしには彼の単なる強がりにしか聞こえない。

「でもそれにしても…
『新潟支社特別VIP接待課』だなんて」

「あ、いや、支社内では役職以外にはシークレット扱いには一応はなってますけどね…
 それに…」

「え、それにって?」

「はい、そのメンバーも選りすぐりの確か3人か4人だったかな?
 で、竹下が課長で、その他が係長、主任、副主任と、ウチの社内では珍しい、いや、秘書課だけに於いての唯一の女性役職で…」

「あ、そうか…」
 そう、この保険会社はあり得ないほどに男尊女卑の強い社風であるから、女性の役職なんてそもそもがあり得ないのである。

「だから、女性社員の中では秘書課はある意味憧れ的な部署となってはいるんですけどね…
 だって、女性主体、主力の営業課でさえ役職は全員男ですから」

「え、そうなんだ…」
 保険業界に於いては、ウーマンパワーと云われる位に女性の力、つまりはよく云われる『保険のおばちゃん』『保険レディ』という女性の力が営業の主力であるから、それらの女性を束ねる役職が必要となってくる筈なのだが…
 それらのポジションも男性であるという。

「ま、全ては前真中常務の影響であり、その腰巾着の永岡支社長のせいといるんですけどねぇ」

「…で、アナタ、青山さんはこの新潟支社では?」

「え?、あ、いや、その…」

「まさか、その接待のエースの竹下さんを充てがわれて、牙を抜かれちゃってしまったのかしら?」
 わたしは敢えてそう言い、彼のプライドを揺さぶってみる。

 すると…
「あ、いや、そ、それはっ…」
 彼は一転、キッとムキになった顔になり…
「いや、それはなんとかしようとはしてましたよ、だから、まずは、資産運用の方で力を付けて、そして…」

 なるほど…

「機会を伺っていた?」

「うん、ただ、なかなか独りでは…」

「でも、本社がコケて、前真中常務も撃沈したから…」
 と、わたしが問う。

「そう、そのタイミングでのえっちゃん、あ、越前屋からの連絡でしたから…」



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