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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

118 秘書 松下律子(28)

「あ、そ、そうだったんですか……」
 まさかの彼、青山一也曰くの想像以上の酷い内容に、さすがにわたしも驚いてしまう…

「な、なんか、知らなかったとはいえ……」
 少しキツメに言い過ぎたかと…

「ま、サラリーマンなんでね、権力という力には敵わないみたいな…ね」

「……………」
 さすがにそのパワーバランスの強さは分かっているだけに返す言葉が無かった。

「ま、秘かに異動直前に、その後輩に少しイタズラを仕掛けてやったんですけどね」
 と、今度は彼は不適な感じの笑みを浮かべ、そう言ってくる。

「あ、あぁ、例の…」
 それは越前屋さんから聞いていた本社の都市伝説と云われている…
『青山一也の逆襲』という、本社資産運用部の大失態の株式ファンドでの大損の話し。

「あ、知ってるんですか?」

「はい、越前屋さんから都市伝説って感じで伺っておりました…
 本当だったんですね」

「まあ、そう、本当ですよ」
 今度は完全に勝ち誇ったドヤ顔をしてくる。

 やはり青山一也は、さっきの第一印象とは違う、やり手の奥深い男であったようだ…

「だから、そんないきさつがあったんで、永岡新潟支社長は自分を高評価してくれ、そして取り込もうとVIP待遇の接待をしてくれ……
 簡単に落ちてしまったんですよね」
 と、今度は情けない表情に戻った。

「でも、本当に彼女に魅力を感じちゃってぇ…」

「もぉ、ホント男って…」
 わたしは呆れ気味に呟く。

「え、と、松下さんとはまるで真逆な…
 うーん、彼女の魅力を一言で例えるなら…
 そう、肉惑的な魅力って感じかなぁ…」

「え、肉惑的?」

「はい、そんな感じですかねぇ…
 松下さんとは真逆的な魅力ですよ、だから、さしもの大原常務だってぇ…」
 と、また、彼はわたしを煽るかの様に言ってくる。

「ふぅん、肉惑的かぁ…あっ」

 その時、わあしは、その肉惑的な魅力って云う彼の言葉に…
 ピンと心に浮かんだ顔があった…

「え、ま、まさか…」
 そして思わずそう呟くと…
 彼、青山一也の目が物語ってきたのである。

 まさか…
 え、そうなの?…
 彼はわたしの目を見て、黙って頷いてきた。

 え、まさか、そのおみやげ接待のエースって?

 わたしの脳裏には、支社長専属秘書の彼女の顔が浮かんできていた…



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