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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 117 秘書 松下律子(27)

「あ…いや、め、面目ない…」
 そして彼、青山一也は消え入る様な声でそう呟いてきた。

「本当に本社では女性社員の立場向上と、理不尽な男尊女卑に対して必死に闘ってくれていたって越前屋さんが云ってましたけど…違うんだぁ」
 と、わたしは一気に攻めていく。

「あ、は、はい…そう、そうだったんですけどぉ………」
 そして彼は意気消沈したかの様な感じとなりながらわたしに対して言い訳的に、この新潟支社への異動の経緯や、その接待の女性についてを語り始めてきた。

「ま、最初は妹が入社したっていうきっかけがあったんですがぁ…………」

 ……実は、転職してきてから社内に彼女が出来て、まずはその彼女からこの酷い男尊女卑風潮の社風を聞いたんですよ。
 そして、入社してすぐに自分の株式投資運用能力に高評価を貰い、実績を上げていたという事もあり、とんとん拍子に出世できてきていたせいなのか、前常務からアプローチがあったんですよ………

「アプローチ?」

「あ、はい、ま、簡単に云えば、秘かに裏金を作れ…とね。」

「う、裏金?」

「はい、もっと簡単に云えば、前常務の懐に入る株式運用の依頼ですよ」

「あ、なるほど…」

「最初は、社内機密費が必要だから協力してくれって事だったんですが、自分の彼女は経理系の部署に居たから直ぐに懐を、私腹を肥やす為の運用だって知って…
 それにその頃あたりから妹と同期のえっちゃん、あ、越前屋さんを紹介されて…
 女性社員に対しての酷い現状を知り…」

 ……そこで自分が、その私腹の運用利益を交渉のエサにして、前真中常務とやりあったんですが……

「さっさと常務には見切られてしまい、自分が育てた後輩にポジションを奪われ、新潟に飛ばされた……
 ま、そんな感じの経緯なんですけどね…」

「それは酷い……」
 
「そして左遷異動が決まった途端に彼女にもフラれまして…
『新潟なんかには行きたくはない…』
 ってね……」

 ……あの頃は結婚なんかも考えていた彼女だったんで、さすがに自暴自棄になってしまっての新潟異動だったんで、目の前の美味しそうなエサに簡単に食いついてしまったみたいな感じだったんです……

「あ、そ、そうだったんですか……」
 まさかの、想像以上の酷い内容にさすがにわたしも驚いてしまう…



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