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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 116 秘書 松下律子(26)

「はい、で、自分は気楽な独身男だし、まぁ実に簡単に、呆気なくその永岡支社長が用意してくれたおみやげを美味しく、軽く頂いてしまった訳で…」
 と、彼、青山一也は、今度は気恥ずかしそうな顔をしながらそう言ってきた。

「ふぅん、そういう事なのねぇ」
 だからこそ、そんな自分を棚に上げて、余計にわたしを煽る様に言ってきていたようでもあったみたい。

「あ、はい、恥ずかしながら、呆気なくですね…
 でも、だからって大原常務だってオトコですから、どう転ぶかは?」

「うん、まぁ、そうかもしれませんけどぉ、大原常務に限っては立場もあるしぃ…」
 と、また、再びわたしがそう繰り返すと…

「いや、ま、そうかもだけど、彼女の魅力もかなりのモンだからなぁ」

「という事はぁ、青山さんはそのおみやげさんが誰かなのかは分かってるんですねぇ?」
 わたしは素直に疑問を問う。

「え、ええ、多分、VIP接待だから間違いなくウチの絶対的なエースの、そんな彼女に前常務はメロメロだったみたいだし…」
 と、そこまで言って言い澱む。

「絶対的なエースって?」
 そんなポジションがこの新潟支社にはあるのか?…と、わたしは少しずつ怒りを感じ、それに伴いイライラ、ムカムカとした感情が湧いて沸いてきていた。

 そしてそんなわたしの感情が顔に表れたのだろう…
「あ、でも彼女達も、この会社内で必死に生き残り、這い上がろうと…」
 と、彼はそう言ってくる。

 確かにこの会社は、正に、そんな極端に偏り、片寄った、旧態依然な男尊女卑の風潮をまかり通してきた社風である訳なのだが…

 だからこそ、彼、大原常務はこんな色仕掛の、接待という名目の誘惑には負けてはいけないのだ…

 いや、万が一、負けてしまったのなら正に本末転倒であり…

 この会社を新たに生き返らせ、改革をするという…

 いや、わたしが愛するに値する資格さえも完全に無い。

 いや、資格どころか価値さえも無い…

「そんなことは、ううん、それは詭弁なんじゃないんですか?
 いいや、青山さんは本社ではそんな理不尽な男尊女卑のこの会社と闘ってきたんじゃなかったんですか?」
 わたしはそのイライラな怒りに語気を強めてそう言い放った。


「あ…いや、め、面目ない…」
 そして彼は消え入る様な声でそう呟いた。



 

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