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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 107 悪しき慣例

「あ、運転手さん、アソコへ『ばかうけ展望』ね」
 そして私達は高級料亭を出て、待機しているハイヤーに乗り込んだ。

「あ、あれ、永岡支社長は?」

「はい、支社長は直ぐ後から来ます」

 ヤラれた…

 やっぱりヤラれたのだ。

 私はまんまと…
 永岡支社長とその接待要員である専属秘書の竹下雪恵の二人の、このVIPの接待コースの、いや、真中前常務との接待の慣例通りのシナリオにハメられてしまったのだ。

 そしてハイヤーが静かに新潟市内を走っていく…
 するとすかさず、隣に座った彼女のタイトなスーツのスカートから伸びている、肉惑的で魅惑的なストッキング脚の太腿が私の足に密着してきたのである。

「…………」

 私は拒絶する気なら、サッとその彼女の脚から離れる事が容易に出来るのであるのだが…
 なんとなく、この続けて上半身までをも密着してきた、いや、すっかりと私に寄りかかってきた彼女の事を退けられないでいた。

 なぜなら、そんな彼女の行動からは、なんとなく必死さが感じられてくるから…
 いや、それはただ単に、この永岡支社長との会食という接待に同伴してきたという事に対して私自身が彼女の、そしてこの支社長専属秘書という実質は必要のない、いいや、完全なる接待要員としての彼女なりの存在意義をそう感じ、受け止めた思いからの…
 ここで彼女を真っ向から否定しては、彼女自身だけではなく、支社長専属秘書という新潟支社内では至極重大で重要なポストの存在意義をも完全否定してしまうのではないのか?…
 と、私は咄嗟に思ったからである。

 果たして彼女の本心の中身は計りようがないのではあるのだが…
 つまりはこの私に対して、いや、この私をどう見て、どう考えて、どう思っているのかは分からないのであるのだが、これも、この流れも彼女にとっては専属秘書としての仕事の、業務の内なのだと思われるのだ。

 だから、そう簡単にはこの彼女の今の、このハイヤー内での存在を否定はできないし、したくはない…

 そしてこの流れが生まれてしまった事自体が、前任の、真中常務が生んだ、正に悪癖ともいえる…
 悪の慣例なのだと思うし、それをこの私が、これから変えて、生まれ変わらせていかなくてはならないのだと思うのである。

 だがもうひとつ…
 


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