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　65　敦子の想い(2)

　あの夜は…
　あの最悪な○△生命保険会社を退職直後に…
『今度は絶対に大丈夫だから…
　わたし達の希望が叶う企画だから』
　と、越前屋に無理矢理誘われて…

　まあ、せっかくだから話しだけでもしてみるか…
　と、あまり期待もせずに、待ち合わせの越前屋の叔母さんの居酒屋に行った。

『あ、室長が来たわ』
　店の前にタクシーが止まり、降りてきた女性を見て越前屋がそう言ってくる。

　そしてわたしはチラと遠目でその女性を見ると…

『あっ、えっ、ま、まさか…』
　わたしの心が一気に激しく高鳴り、昂ぶった。

　えっ、あ、あれは、ゆ、ゆかり、お姫さま…

　ま、まさか…

　わたしは一瞬、自分の目を疑ったのだが…

『い、いや、間違いないわ…』

　あれから約10年…
　だが、見間違いのないくらいに彼女は、いや、あの憧れのゆかりお姫さまは…
　変わってはいなかったのだ。

　ドキドキドキドキドキドキドキドキ…

　わたしの心は、まるで破裂でもするかの勢いで激しく高鳴っていた。

『ま、まさか…』

　まさか、こんなところで、あの憧れのゆかりお姫さまに再会、いや、会えるとは…

　ドキドキドキドキドキドキドキドキ…

　わたしの想いが一気にあの頃…

　あの約10年前のあの頃に還っていく…


　あの頃…

　約10年前…

　まだ間もなく16歳、高校一年生の初夏…

　そうあれはＧＷが終わった辺りだった。

　横浜生まれの横浜育ちのわたしは、あの頃は少し生意気で、イケイケなギャルを卒業気取りのまだ青臭いマセガキであった…
　
　一応、ミッション系のお嬢様高校に親の勧め通りに進学したから、昼間はマジメに通い、夜は塾に通うフリをして当時の遊びの主流であるディスコ通いを覚え…

　少しばかり可愛いからと周り二チヤホヤされながら、横浜界隈で調子に乗って遊んでいたのだ。

　そんな時に…
　ゆかりお姫さまと出会ったのであった。