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アシスタントで来ただけなのに…!

第2章 共同生活と住み着く男の霊

「では、一階の部屋を見て回ってくれないか」

「…え?一階の部屋ですか?」

屋敷に上がった時の光景を思い出す。
ホールから見えたのは彫刻を囲む三部屋。
一部屋はリビングのような部屋、あとの二部屋は扉が閉まっていてノックしても特に中から応答がなかった部屋。

嫌な予感がする。
ここまでの話の流れで私は察した。

「…もしかしてですけど」

「お化けを見てこいってことですか?」

「そうなるな」

ええぇ!と変な声を上げた。
私は見える体質だが、幽霊に耐性があり怖いのが平気な訳では無い。断じて。

むしろここまでの道のりも怯えながら来た。
今まで見てきたものだって、慣れているだけで近づいてみようなんて好奇心は微塵とない。

第一、そんなのモデルの仕事と関係ないのでは?

咄嗟に私は手を首を横に振った。

「いや、いやいや!嫌ですよ!そんな怖いです!」

先生は首を傾げた。

「慣れているわけではないのか?」

「見るのは慣れてますけど、自分から近づこうなんて思いませんよ!」

何を考えているのだ。
まるで私を実験台にしようとしているではないか。

嫌がる私を見て、困ったなと呟きながら背を向けた。
その時、ふと面接で体重を聞かれた時を思い出した。

これは、また‘アシスタントの仕事は任せられない’と言われてしまうのか。

ここまで来たのに、それだけは嫌だった。
しかしこの状況を回避する方法が見つからない。

私は拳を握りしめて、背を向けた先生にハッと思いついた案を提案した。

「なら、先生が案内してくれますか?」

くるりと振り返った先生は、間を置いて頷いた。

「分かった、そうしよう」

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