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アシスタントで来ただけなのに…!

第2章 共同生活と住み着く男の霊

先生は椅子に腰かけたまま、私に向き合った。

「君、霊感はあるのか?」

直球に投げかけられた言葉は胸の中に突き刺さったようで、反射的に身体がピクリと飛び跳ねた。

やはり、ホラー漫画家ということもあり気になるのだろう。
またルイ先生のような深く探究心がある人は普通とは違う怪奇な力に興味があるはずだ。

生まれ持った人とは違う、見えないものが見えるこの力を活かせればと思ったが、いざ直球に聞かれるとなかなか口が開かないものだ。
隠すべきではないはずなのに、ありますっと簡単な言葉も出なければ頷くことすらままならない。

そんな私を見かねると、先生はカチャッとペンのノックボタンを押してふむっと納得したように頷いた。

「…なるほどな、君にはそういう力があるんだな」

ノックボタンを押した割にはメモをとる様子はなかった。
何か考えているようだ。
私は結んだ口元をやっと開けて、言葉を発した。

「…小さい頃から黒い影が見えたり、周りには聞こえない音とか聞いてました」

幼少期の頃の記憶が蘇る。
学校の女子トイレの片隅にいた黒い影、よく見たら髪を垂らした女のようにも見えた。
その女の上には黒くて長いのがべったりと壁にくっついていた。髪の毛なのかは分からない。

他にも父の墓参りに行った際も、急に頭痛がしたり、小さかった私はよく母に泣きついては行きたくない!と叫んでいた。

人には言えなかった。きっと信じてもらえないと思ったから。
胸の内に秘めていた。霊感があるなんて嫌われてしまうし、嘘つき呼ばわりされるのが目に見えていた。

私は今初めて、人に自分の秘密を話した。
胸に秘めていたことを明かすのはなんだか不思議な気持ちになる。

「…その、嘘だと思いますか?」

この薄気味悪い屋敷に来れたこともあるが、不思議と先生といる時は頭痛や寒気がしない。
今まで霊感がある素振りをしなかったこともあり、信じられないのではないかと胸が締め付けられるような感覚になった。

先生は悩む仕草をやめず、ただ私の目を見つめた。

「別に疑ったりはしない。嘘だとも思わない」

肩の力が抜けた。
安心したかのように息を吐いた。

誰にも言えなかった秘密を嘘だと思わないと断言してくれた先生に認められた気がして少し涙ぐんだ。

良かった、信じてくれた。

胸を撫で下ろして、安堵していると先生が口を開いた。


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