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俯いた顔を上げて、先生を見つめた。
見上げて見る先生の顔は、やはり美しすぎて直視できない。
すぐ目を逸らしたくなったが、先生は口を開いた。

「そうだが、問題でもあるのか？」

変な声が出そうになった。
私が感じた違和感は正解だったようだ。

「あ、あ、そうなんですね。てっきり女性かと…」

しまった、今のは失礼だったか。
先生は顔色一つ変えないが、不快に思ったかもしれない。
私はすぐ様頭を下げた。

「す、すいません！失礼なこと言って」

「構わない、この顔立ちだとよく間違われる」

そう言うと、先生は前かがみになって私の頬に手を伸ばした。

「んっ！？」

伸ばした手はむにゅっと私の両頬を掴んで、じっと目を見つめる。
目と鼻の先に輝かしい程の美青年の顔がある。
私は目を左右に動かしてできるだけ目を合わせないようにした。

「…なるほどな」

「にゃ、にゃるほどとは？」

情けない姿を見られている気がする。
目をぱちくりさせて、先生が今何をしているのか、なんて聞けばいいのか思考を巡らせた。

途端に先生は手を離して、履歴書に目を通した。

「須藤加奈子、年齢は…22か」

「こ、今年卒業したばかりです」

ふぅと一息ついて、再度背筋を伸ばす。
今起きた状況のせいか、今私は面接に来ていることを忘れてしまいそうになる。
気を取り直そうと、自分の頬を軽く叩いて先生に向き合う。

「ここまでどれくらい時間がかかった？」

私は今までの辿った道を思い返す。
確か家から駅は10分程で、電車は1時間程、降りて山道からここまでは丁度20分くらいだ。

「1時間半くらいです」

「なるほど、やはり近い距離を選んで正解だった」

先生は履歴書に目を向けたまま続けた。

「ここに住んでもらう為には、近い距離に住んでる人を選んだ方がいいからな」

なるほどと納得したが、それよりも今重大なことを言われた。

「す、住む！？」

つい大きな声を出してしまった。
住み込みなんて貰った書類には一つも書いてなかった。
まずアシスタントが住み込みで働くなんてことは聞いたことがない。
驚きのあまりポカンと口を開けていたが、私はハッと閃いたように先生に言った。