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アシスタントで来ただけなのに…!

第1章 鬼才漫画家、市川ルイ

堪らずガチャりと扉を開いた。
扉は不用心なことに施錠されていなかった。

目の前に広がった光景は豪華なエントランスと埃まみれのシャンデリアだった。
中央には色褪せた彫刻でできた馬に乗った騎士のような物が飾られている。

扉を閉めてコツコツと前に進む。
床はフローリングになっており、靴箱もスリッパも用意されていなかった。
土足で上がっていいのだろうか。

迷ったがフローリングは汚れていて、おそらく土足で出入りしているんだろうと思い至った。
私は先程の山道でパンプスの裏についた土を軽く落として、ハンカチで手を拭いた。

そしてそのまま土足で中へ入り、彫刻を囲った部屋を確認した。
三部屋あり、その内の一つはソファとテーブルが置いてあるリビングの様だった。
あとの二部屋は扉が閉まっており、中の様子は見えない。

そして彫刻の横には、上へ続く階段があった。
私はまず最初にリビングの中を見渡したが、人の気配を感じなかった為、奥には進まなかった。

そして残りの二部屋はノックをして中に人がいるのか確認したが、扉が開くことはなかった。

残すは二階だ。
私は真ん中に赤い絨毯が引かれた階段を上り、そこから辺りを見渡した。
登り終えた階段から続く廊下からは、下の階の中央が見え、吹き抜けになっているようだった。

柵から顔を出して上を見ると埃まみれのシャンデリアはすぐそこだった。
そして、吹き抜けを囲うように部屋がまたしても三部屋あった。

一つ一つノックして回ろうと思ったが、奥の部屋の扉が少し開いているのが見えた。
私はその部屋に何かがあるのではと思い、通りがかる二部屋を背に一番奥の部屋へ足を進ませた。

中を少し覗くと、微かに明かりが灯っていた。
よく耳をすませば、パソコンのキーボードを打ち込む音がする。
もしやと思い、優しくドアを三回ノックした。

急に手が汗ばみ始める。心臓が音を立て始めた。
中から誰が出てくるのかは分からない。
市川ルイ本人か、他の人か。
もしくは全てがいたずらだとしたら、それを仕向けた犯人なのか。

しかし、少し待ってみても人が出てくる様子は無い。
どうしたのだろうと、もう一回ノックをしようとしたら隙間風でドアがゆっくりと開いた。

扉の先が見えた。すぐ様目に入ったのは、金髪の長髪頭の後ろ姿だった。

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