
イジワルな彼女。
第9章 縁-エニシ-
「…俺も気づいたら好きだった」
僕は気恥ずかしさから、亮太に背を向け
ソファの端に腰を掛けた。
「だった…って過去形か?」
「…まだ好きだけど」
「だけど?」
「だけど、何の進展も見込めません!」
僕は無理やり声を張り上げた。すると、
TVのボリュームが段々小さくなっていく。
「でも、諦めらんねーんだろ?」
「…」
「つーか、諦めなくていいんじゃね?
相手、彼氏でもいんの?」
「…」
「別にいたとしても、お前が好きな限り
そのまんまでも良くね?」
「………もう一生会えないかもだけど」
「一生って…ずいぶん大袈裟だな。
会いに行けよ!遠距離か?」
「…近くて遠い、名前しか知らない相手」
僕はソファから立ち上がり、
「どこに住んでるのか、
そもそも連絡先すら分からないとか…
マジで終わってるよなっ!」
最後は半笑いで亮太にそう告げると、
テーブルに置いたコンビニ袋から
飲み物を取り出し長めに一口飲んだ。
「かっこわる!
そうだ、文化祭のコスプレ決めようぜ!」
僕はソファに座り込み、
亮太の顔は見ないまま話題を変えた。
「悠!ちゃんと話せよ。
全然意味わかんねーし…。
お前、いっつも1人で考えすぎ。
それに一生なんて誰が決めた?お前だろ?
わかんねーじゃん!
まだ始まってもないんだから、
終わってもないだろ?」
亮太の言葉が胸に刺さる。
僕は少しずつ、唯さんとの出逢いを
亮太に打ち明けていった。
