
イジワルな彼女。
第10章 翼-ツバサ-
「…いいよなぁ」
「何が?」
「悠もさつきも、
ちゃんと行きたい大学決まってて。
しかも、ほぼ決まってるようなもんだろ?」
「原はともかく、
俺はそんなことないけど」
亮太の口から、
進路の話が出るなんて珍しい。
「俺はFランでも入って、遊び倒すかな!」
その言葉とは裏腹に、
亮太は浮かない表情をしている。
「…バイトないなら、予備校来いよ」
「…」
「なっちゃんも心配してたぞ」
「…今更すぎね?」
「それって誰が決めた?…お前だろ?」
「悠…俺の名台詞、パクんなよ!」
そう言って亮太は、
予備校への復帰を決めたようだ。
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴る。
僕はモニターを確認すると、
母親が買い物袋で塞がった両手を
これでもかとアピールしてきた。
「はいはい」
仕方なく僕は玄関へ向かった。
