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イジワルな彼女。

第9章 縁-エニシ-


「…今日バイトは?」

「それが、店長が受験終わるまで
全然シフト入れてくんねーんだよ」

「そっか。…俺ん家、来る?」

「!?行く行くー!行っちゃうー!」

亮太は嬉々として、
わざとそんな返事をしてきた。
お陰で車内は、ややざわついている。

「…」

僕はスマホに繋いだイヤホンを耳に挿れ、
はしゃぐ亮太を横目に窓の外を眺めた。


地元に着くと
とりあえずいつものコンビニに立ち寄り、
飲み物を調達して自宅に向かった。

「おじゃましまーす!」

玄関を開けて中に入ると、
亮太の声が響いた。

「そこ座っていいから」

「おう」

亮太はリビングのソファに腰をおろした。
僕は自分の部屋に入り
エアコンの効きを確認すると、
ついでにリュックを部屋に置いてから
キッチンへ向かった。

「バニラのカップか、
ソーダかコーラ…どれがいい?」

冷凍庫を開けながら、亮太に問いかける。

「お構いなくー!」

僕はソーダとコーラのアイスを掴んで、
リビングに戻った。

「とりあえず、クールダウン」

アイスを2つ差し出すと、
亮太はコーラの方を手に取った。
僕もソファに座り、すぐに封を切った。

「あざっす!」

亮太も手際よくアイスを開封し、
ガリガリと食べ始める。

「生き返るー!」

亮太はあっという間に食べ終えた。


「…」

しばしの沈黙。
適当につけたTVの音だけが
リビングに流れる。
亮太は黙って、その時を待っている。

僕はアイスのゴミを回収しながら、
亮太に気付かれないように深呼吸をした。

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