
イジワルな彼女。
第9章 縁-エニシ-
「あ!そうだ…」
突然、亮太は何かを思い出した様子で
自分のリュックの中に手を入れて
何やらごそごそと探りだす。
「忘れもん」
そう言って、僕にイヤホンを手渡した。
「失くしたと思ってたわ。サンキュ!」
「昨日、悠が帰ってから
床に落ちてたのをさつきが見つけたんだよ」
「そっか。
新しいの買うか迷ってたから助かったわ」
亮太は何故かドヤ顔をしている。
「なんだよ、その顔」
僕はすかさず突っ込むと、
「イヤホンないと困るもんな?」
「まぁな」
「じゃあ、昨日は大変だったな」
「?」
「画面に夢中になっちゃったんだもんな?
うんうん。それで目を…」
「ちょっと待て」
「いいって。健全な証拠なんだから。
いろいろ溜めこむのは、よくねーしな!」
「バカ!声でけーし全然ちげーよ!」
同じ車内の乗客が、僕らをチラチラと
見てくるのが分かった。
「まったく、お前なに勘違いしてんだよ」
僕は溜め息をつくと、次の停車駅で
亮太と電車を降りて隣の車輌に移動した。
