
イジワルな彼女。
第9章 縁-エニシ-
僕はタイミングを伺っていた。
亮太に唯さんの話をすることは決めたが、
どう話したらいいか迷っていたからだ。
駅のホームで僕は亮太に問いかける。
「なぁ」
「ん?」
「何で亮太は…
その、原のこと好きになったんだ?」
「へ?」
気の抜けた亮太の声がする。慌てて僕は、
「いや、そのさ、
昨日のこともあったし。
何か色々考えさせられたっつーか…」
質問が直球すぎたのを後悔しながら、
しどろもどろになりながら続けた。
「うーん…気づいたら好きだった」
意外にも、亮太は普通に答えてくれた。
「そ、そっか」
「そんなもんじゃね?
あー、悠は色々考えるタイプだもんな」
「…まぁ、お前よりは考えるな」
バシッ
「痛っ!」
僕は頭をやや強めに叩かれた。
「悪かったな!」
「…」
僕はペシャンコになった髪を整えながら、
次のアプローチを模索していた。
「俺は、悠がやっと
誰かを好きになったのが嬉しいんだよ」
そう亮太の声がしたが、
ちょうどホームに電車が入ってきたので
いまいち聞こえが悪かった。
電車に乗り込むと、僕は呟く。
「…叶わない相手でも?」
「あぁ」
「虚しくないか?」
「そりゃあ、相手が人妻だったりしたら
さすがにきついけどな」
「…」
「それでも、俺なら後悔したくないし。
当たって砕ける勢いでいくけど」
そう答える亮太が、僕には眩しく見えた。
