
イジワルな彼女。
第8章 絆-キズナ-
「てか、よく気づいたね?」
大野さんが僕に言う。
「はい。聞いたことのある声だったので、
もしかして…と思って」
「そっか」
隣を歩く大野さんは、
喫茶店で働く大野さんとは別人のようだ。
「…髪、染めたんですか?」
「そう。ちょっと明るくなりすぎちゃった」
大野さんは持っていた買い物袋から
キャップを取り出すと、そのまま被った。
「あ!その、すみません!」
咄嗟に僕は謝ったが、
「美容の専門に通ってる友達の
練習相手になっただけだから、
気にしなくて大丈夫!」
大野さんは全く動じず、
「でも新鮮でしょ?
マスターもびっくりするかなぁ?
クビになったらどうしよう!」
そう笑いながら、
「小日向くんも髪切って誰か分からなくて
最初、ナンパかと思ったよ」
なんて冗談を交え、
大野さんはまた僕をフォローしてくれた。
お陰で僕の緊張感も、
だんだんと和らいでいった。
